2010年9月1日水曜日

アレロパシーについて

ここのところ、植物のストレスに対する生理反応について述べてきました。
→ 植物の高温ストレス 植物の病害虫に対する自衛機構

植物のストレスとしては、この他にも水ストレスとか、塩ストレスとか、色々と重要なものはありますが、自分でもこの手の話を続けることに飽きてきました。

従って、これらの話題は別途ほとぼりが冷めた頃に譲ります。

今回は植物の出す化学物質つながりで、アレロパシーについて述べてみたいと思います。

アレロパシーとは、「他感作用」と訳されます。

元々、ある植物がつくる物質が、別の種類の植物に対して何らかの作用を及ぼすことを言ったようです。

ただし、現在ではもっと広い意味で用いられ、同じ種類の植物とか、植物以外の他の生き物(昆虫や微生物など)に対する作用も含まれるようになっています。

アレロパシーの中で、最も有名なものの一つが、セイタカアワダチソウです。

セイダカアワダチソウは、根からシスデヒドロマトリカリアエステルという、寿限無のような名前の物質を出します(以下、この物質名は長いので寿限無物質と呼びます)。

この物質は、他の植物の発芽や生育を抑える働きがあります。

こうして、他の植物が生育できないうちに自分たちが成長して繁殖して行きます。

また、前回にも出てきたエチレンですが、これは空気中にガスとして出てくるので、やはり他の植物にも影響します。

例えば、隣り合う植物が生育していって、お互いに接触するくらい大きくなったとします。

その時に風かなにかで、相手の植物が自分の葉や茎にあたって揺らしたりすると、その植物はエチレンを放出し、果実が成熟したり葉が落ちたりしやすくなります。

人間でいえば、その筋の人の肩に別の人の体が接触すると、インネンという名のアレロパシー現象が発動して、罵声と呼ばれる空気振動が発生し、これにより相手の元気をなくさせるようなものかと思います。

話は戻って、このようなアレロパシーの効果は、他の植物だけでなく、自分自身も影響を受けます。

セイダカアワダチソウは、日本に侵入してから猛烈な勢いで繁殖しましたが、最近では上記の物質で自分自身の生育が抑えられてしまい、増殖も一息ついています。

これが連作障害とか、忌地とか呼ばれる現象の原因の一つです。

こういったアレロパシーですが、このような現象を知ると、これを利用しようとするのが人間の常です。

具体例をいくつか挙げてみます。

先ほど、セイダカアワダチソウから出る物質の中に、他の植物の生育を抑制するものがあると述べましたが、これを利用して自然農薬が作られたりします。

私も一度、やったことがあります。

セイダカアワダチソウの根を沢山取ってきて、木酢液に漬けて例の寿限無物質を抽出すれば、雑草を生えにくくする働きがあるのではないか、と思って畑に撒いてみました。

結果は、一言でいうと、ほとんど効果を感じられませんでした。

今から思えば、寿限無物質が十分に溶けなかったせいかもしれません。

このほか、セイダカアワダチソウの草を刈ってマルチ代わりにする、というのも試したことがあります。

これも、普通に敷き藁する以上の効果は、実感できませんでした。

まあ、そんなに強く効くぐらいだったら、その植物自身が除草されてしまうので、こういった自然農薬というのは、少しだけの手助けになる、といった程度に考えておいた方がよいように思います。

以上は失敗の話で恐縮でしたが、こういった調子で、有用な植物の成分を抽出したり、刈り敷きしたり、混植したりするのが、アレロパシーの一般的な利用法です。

利用される植物は、セイタカアワダチソウ以外に、ヨモギとか、スギナ、ハーブ、ムギ、ニラ、等々色々なものがあります。

最近注目されているのは、ヘアリーベッチです。

これはマメ科のカラスノエンドウの仲間で、雑草、特に広葉雑草に対して強い抑制効果がります。

その上、地面を被覆する効果が高いため、さらに雑草が生えにくくなります。

この他、花が咲いた後にいっせいに枯れて敷き藁状になるので刈り取りの手間がかからない、チッソを固定して緑肥となる、土が柔らかくなる、昆虫類が増えて害虫密度が減る等々、
優れた機能を持っています。

ただし、イネ科雑草、例えばメヒシバやイヌビエ等は生育を抑制されないので、注意が必要です。

私はヘアリーベッチは使ったことはありませんが、カラスノエンドウやクローバーは効果を実感しています。

参考にした本

藤井義晴 自然と科学技術シリーズ アレロパシー 農文協




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