2010年8月15日日曜日

植物の高温ストレス

これまで、植物の生育についての色んなテーマで調べてきました。

こういったことについて調べて行くうちに、次第に疑問が生じてきたことがあります。

植物の健康って何でしょう?

病気にかかっていなければ、それが健康な状態といえるでしょうか?

あるいは、栄養が十分であれば、それで健康なのでしょうか?

どちらも違う気がします。

人間に当てはめるとわかりやすいと思います。

有名なWHO(世界保健機関)の憲章にも、

「健康とは・・・(中略)単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と述べてあります。

そこで、健康とは、ということについて調べてみました。

すると、恒常性(ホメオスタシス)という言葉に行き当たりました。

ホメオスタシス・・・生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態を指す。(Wikipedia)

そして、健康とは、この恒常性が維持されている状態というのが、重要な要件のようです。

そこで、この恒常性について、今の時期のような高温時の植物の対応を例に述べてみます。

まず、植物は種類によって異なるものの、各々生育に最適な温度があります。

この最適温度よりも気温が高くなりすぎると、体温を下げようという方向に恒常性が働きます。

そのために、植物は気孔を開いて、体内の水分を蒸発させます。

これを蒸散と言います。

水が蒸発する際に気化熱が奪われることにより、体温が下がります。

前回述べた人間の場合の発汗作用と同様の効果です。

ただし、温度がさらに高くなったり土中の水分がない場合は、この対策のみでは不十分です。

人間は汗が出過ぎると熱中症になるように、植物も蒸散しすぎると水分が足りなくなってしまいます。

また、温度が高くなると、植物は呼吸がさかんになります。

光合成も活発になりますが、光合成よりも呼吸の方がより高温で活発となります。

光合成は、光と水と二酸化炭素から栄養分を作り出す反応で、呼吸は栄養分を消費する反応なので、呼吸の方が優勢になると、植物が蓄えていた栄養分が消費されることになり、結果として栄養失調となります。

従ってこれを防ぐために、種子や一部の株では、ある温度以上となると呼吸量を減らします。

そして、休眠状態となって、気温が下がるまで待ちます。

さらに別の対策として、熱ショックタンパク質というものを合成することも知られています。

通常、高温時の障害の主原因は、細胞質の成分のタンパク質が変質することです。

これを防ぐために、植物が高温下に一定時間さらされると、熱ショックタンパク質を合成します。

これは、さまざまなタンパク質の合成や、熱で変質したタンパク質を修復する働きがあります。

さらに、このタンパク質は、水分不足や傷ついた細胞を修復するのにも役立つ優れものです。

このように、植物は何重もの防御機構をもつことにより、恒常性を維持し過酷な環境下でも生存していくことができます。

参考にした本

山本良一 櫻井直樹 増田芳雄 絵解き植物生理学入門 オーム社


塩井祐三 井上弘 近藤矩朗 ベーシックマスター 植物生理学 オーム社


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