2010年9月15日水曜日

輪作と混植、その2 混植

前に、輪作と混植について書こうとして、前振りだけで終わってしまいました。
(前回→ 輪作と混植、その1

今回は主に混植について、考え方といくつかの例を述べてみたいと思います。

まず、前回は自然の多様性と人間の単一化指向の溝を埋めるために輪作、混植が必要と述べました。

これを人間の側から言い換えれば、単一の作物だけを連作したいところをぐっと我慢して、輪作、混植を行うことにより、植物に好ましい環境を作ろうとするものです。

ここでいう植物の環境としては、大きく以下の3つに分類できます。

1)気象要素・・・日照時間、降水量、気温等

2)土壌要素・・・物理性(固さ、緻密さ等)
化学性(肥料成分、保肥力等)

3)生物要素・・・雑草、鳥獣、虫、微生物等

このうちのどれを改善したいかにより、 混植の組み合わせ方が決まってきます。

決め方としては、通常は主に栽培したい植物を最初に決め、その作物の弱点に着目し、それを改善するための混植植物を選定します。

具体例をいくつか挙げます。

トマトは最も人気の高い野菜のうちの一つですね。

これは、病気にかかりやすいので、病害虫の防除が重要なポイントです。

そこで、病原菌の発生を抑えるような植物、たとえばネギやニラを混植します。

別の例として、トウモロコシは上に上に伸びていく野菜で、地面の日射はあまり遮らないので、雑草が生えやすく、草取りが大変です。

従って、これらを防ぐためにカボチャを混植します。

カボチャのつるが地面を覆うことにより、雑草が生えるのを防ぎます。

この例をカボチャの側から言うと、カボチャは過湿に弱く排水のよい土壌が適しています。

このため、トウモロコシを利用します。

トウモロコシは、根が土壌深くまで入り込むので、水の通り道が確保できて排水性が改善されます。

と、こういった感じです。

上記の環境要素ごとに、利用できる植物の一例を挙げると、

日照、気温(高温)を和らげる:葉を茂らせて日陰を作る
・・・インゲン、キュウリ他多数

土壌物理性を改善する:根を深く張って排水をよくする
・・・ムギ、トウモロコシ、根菜等

土壌化学性を改善する
・・・マメ科植物(根粒菌による窒素固定)

雑草を防除する:ほふく性の植物で地面を覆う、抑制物質
で雑草の生育を抑える
・・・ウリ科、マメ科植物

病害防除:菌の生育を抑制する
・・・ユリ科植物、トウガラシ等

防虫:虫の嫌う匂いを持つもの
・・・ハーブ類

等々。

以上は、環境面から見た混植植物の選び方ですが、それだけではなく、別の目的も付加させることがあります。

そもそも、混植自体が複数の野菜を一つの畑で作ることになるので、土地を有効利用することになるわけですが、 さらに一層進んで、 農業経営をより合理化することが考えられます。

あるいは観光地化を図って、土地の美観をよくしたりすることも狙えます。

合理化の例としては、きゅうりの収穫最盛期のころに、つるありインゲンの種を蒔きます。

キュウリが枯れた頃にインゲンのつるが出てきて、ネットを再利用できます。

美観の例では、トマトの混植相手として、ネギやニラでなく、マリーゴールドやミントを混植すれば、防虫とともに美観や匂いも楽しめます。

混植の注意点としては、以前にも述べましたが、相性の悪い組み合わせに気をつけなければなりません。

例えば、同じ科のものはあまりよくない場合が多いです。

同じような植物であれば、同じような弱点を持つことが多いと容易に推定できますね。

あるいは、機能が背反するものの組み合わせもやめた方がよいです。

例としては、根粒菌を利用するマメ科植物と、微生物の生育を阻害するユリ科を組み合わせるとマメ科植物の生育が悪くなります。

この他、私が調べたものは、以前(自然農法、その3)に述べましたのでご参照いただければ、と思います。

これら以外でも、相性の悪い組み合わせは色々あると思いますので、こまめに付け記録と生育記録をとっておき、色々と組み合わせを考えていくのも楽しいですね。

最後に、混植のデメリットも挙げておきます。

一つは、大型の機械を用いての作業が困難なことです。

農業機械は、高級品になるほど、処理量が増えて精度もよくなる反面、作業できることが限られてくるように思います。

従って、大産地等で何ヘクタールもの畑に混植を適用するのは困難です。

こういう場合は、通常間作といって、畝ごとに交代で複数種の植物を作ったりするようですが、それでも隣の作物が作業の邪魔になり、手間が増えることもあるものと思います。

もう一つの問題は、農薬を使いたい時に、混植されているどちらの植物にも登録されている農薬でないと使えない、という問題もあります。

対策としては、主作物だけを利用する(主作物の登録農薬を用いる、副作物は収穫しない)と割り切って考えてしまうか、あるいは両方の登録農薬がある組み合わせを使う、といった必要があります。

小さな畑であれば、手作業するにしても知れていますし、農薬をピンポイントで撒くことも可能なので有効な方法に思えます。

以下、輪作と混植 その3

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2 件のコメント:

  1. 混植、大変参考になります。
    自給用の家庭菜園で実行させてもらいます。

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  2. 豊田さん、ご無沙汰しています。

    ようやく涼しくなってきましたね。
    今年ももうひと頑張りですね。

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