2010年8月21日土曜日

植物の病害虫からの自衛機構

前回は、植物の高温ストレスに対する自衛反応について述べました。
(前回→植物の高温ストレス

今回は、これに引き続き病害虫に対する自衛反応について述べてみたいと思います。

植物は動物のように動けないので、ただじっと食べられるのを待つだけかというと、そういう訳でもありません。

むしろ、様々な反応を示して、徹底抗戦します。

まずは害虫の食害に対する自衛について。

害虫が、植物の体の一部を食べると、傷害応答という反応を示します。

傷害を受けた細胞質内でカルシウム濃度が高くなり、エチレンやジャスモン酸等の物質が生成します。

これらの物質は、傷害を受けた、という情報を細胞内の核に伝達し、これに対抗するための物質を出すように、働きかける作用があります。

よく、石灰が病気に効く、といわれるのは、このような情報伝達の機能が働くことによります。

エチレンについては、主要な植物のホルモンの一種であることが知られています。

この場合は、傷口部分をコルク化する酵素を出すように働きかけます。

これにより傷口が保護されます。

また、コルクは水にはじくので、外からの余分な水分が中に入ったり、植物内の水分が外に流れたりするのも防がれます。

ジャスモン酸という物質も、植物ホルモンの一種です。

これは、昆虫を撃退する働きがあると言われています。

昆虫が植物のタンパク質を分解する時に出す酵素を働きにくくさせるためです。

次に病原菌が侵入した時の反応について。

病原菌にとっては、自分が細胞内に侵入するためには、まず固い細胞壁を通り抜けなければなりません。

病原菌は通常、菌糸が細胞壁を構成する物質を溶かすことによって細胞壁を壊し、細胞内に侵入します。

そこで植物は、この細胞壁の分解物ができると、細胞内にシグナルを出し、ファイトアレキシンというものを作ります。

ファイトアレキシンとは、殺菌作用を持つ化学物質で、これにより、病原菌から身を守ります。

これは、植物の種類により決まった成分を持つものです。

有名なところでは、ダイコンの辛み成分があります。

ダイコンは、生でそのまま食べると辛くありませんが、すりおろすと細胞が破壊され、ファイトアレキシンのアリルイソチオシアネートという名前の物質ができます。

これが辛みの元となります。

多量に摂取すると、菌だけでなく人体にも有害ですが、微量であればむしろ体によいそうです。

話は戻って、ファイトアレキシンは自分の細胞壁の分解物だけでなく、病原菌の細胞壁の分解物からも誘導されます。

これは少し回りくどい反応ですが、まずあらかじめ病原菌を分解する酵素を出しておき、これに病原菌が触れると細胞壁が分解することを利用します。

さらには、病原菌が侵入した部分の細胞が自発的に死んでコルク化し、病原菌をその中に閉じ込める、という対策もとられます。

以上、私たちの目に見えないところで、植物は病害虫から
精一杯身を守っていることがわかりますね。

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