2010年9月22日水曜日

輪作と混植、その3 輪作

輪作と混植シリーズの続きです。

前回 は混植、今回は輪作です。

混植は同時期に異なる種類の植物を作ることで、輪作は同じ場所で育てる作物の種類を変えて順々に作りまわすことです。

輪作の主目的は混植と同じで、植物の生育環境を良好に整えることです。

生育環境としては、 前回も述べましたが再掲すると

1)気象要素・・・日照時間、降水量、気温等

2)土壌要素・・・物理性(固さ、緻密さ等)
化学性(肥料成分、保肥力等)

3)生物要素・・・雑草、鳥獣、虫、微生物等

このうち輪作の場合は、気象要素は変えようがないので、2)の土壌要素と3)の生物要素がメインとなります。

土壌要素の中では、肥料、特にリン酸吸収の点からの輪作の意義が論じられています。

輪作により、アーバスキュラー菌根菌の働き変わってくる、とのことです。

以前にも述べましたが、アーバスキュラー菌根菌は、多くの植物と共生して、その植物がリン酸を吸収するのを助ける働きがあります。(→ アーバスキュラー菌根菌、その1アーバスキュラー菌根菌、その2

ただし、植物の中でも、菌根菌と共生関係が強い種類と弱い種類があり、それに応じて菌根菌の繁殖状況が変化します。

例えば、 ヒマワリは上記菌根菌と強く共生する植物であり、これを植えると菌根菌の密度が高まります。

そしてその後に、別の強く共生する植物、例えばトウモロコシやダイズを植えれば、菌根菌の共生→リン酸吸収が促進され、生育がよくなります。

逆に、ソバやアブラナ科の植物は菌根菌と共生しないので、菌の密度が低下します。

従って、その後作にヒマワリやトウモロコシ等の菌根菌共生植物を植えると収穫量は随分少なくなるそうです。

以上はリン酸吸収についてでしたが、同様に、前作にマメ科植物を栽培することにより、根粒菌での窒素固定も利用できます。(→ 根粒菌について

ただし、ダイズ等では、窒素を固定した量よりもマメを収穫することにより収奪する量の方が多いため収支はマイナスになるとも言われています。

従って、マメ科植物をある程度生育させた後、鋤き込んで緑肥にするのが有効となります。

次に、生物要素の栽培環境改善について述べます。

これについては、病害虫を避けるという利用が主です。

ある植物を育てると、それに寄生する病原菌が増えてしまいます。

これを無視して連作すると、その病原菌により病気が発生しやすくなります。

従ってこれを避けるために作付けを何年間か開けなければなりません。

トマトのいちょう病を例として挙げると、これはフザリウムというカビがトマトの根に寄生して水分を吸収しにくくさせて萎れさせます。

フザリウムの生存期間は5〜15年といわれており、作付けの間隔を何年も開けなければならないのは、こういった病原菌の生存期間から来ていると思います。

こういったことで、トマトの後作に性質の異なる別の植物、例えばワケギや春菊など病気につよい植物を作ることにより、病原菌が繁殖しすぎるのを防ぎます。

さらに、何作かつくることにより、別の菌が繁殖してトマトの病原菌の密度が低下します。

なお、輪作の一つの方法として田畑転換というのがあります。

これは田んぼと畑を何年かずつ交代で作り回すものです。

田んぼで水に浸された状態と、畑で乾燥した状態を繰り返すことで、病害虫が減ったり、土の性質が変わったりして植物が生育しやすい状態になります。

参考にした本

有原丈二 自然と科学技術シリーズ 現代輪作の方法 農文協




・・・肥料成分の吸収からみた輪作の役割について論じています。

窪吉永 あなたにもできる野菜の輪作栽培 農文協



・・・輪作を何十年も続けている篤農家が書かれた本です。

田畑転換や、畑での作り回し方について実践的に書かれた本で参考になります。

農文協編 農家が教える混植・混作・輪作の知恵




・・・輪作についての実践的な方法から理論まで、網羅的に書かれた本です。

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