2010年11月25日木曜日

堆肥の使用量と使い方

野菜づくりの教科書を見てみると、堆肥をしっかり入れましょう、とよく書かれています。

教科書では、1平米あたり2kg程度が多いようです。

でも、畑によって色んな違いがあるのに、十把一絡げに何キロ、と決めつけていいのだろうかと、いつも疑問に思います。

そこで今回は、堆肥を使う適正量について調べてみました。

まず多量に使いすぎるとどうなるか、についてです。

最も大きな弊害は、窒素分が増えすぎるということです。

堆肥中の窒素はすぐに分解せず、何年にもわたって少しずつ分解していきます。

その結果、窒素分が徐々に蓄積していくことになります。

そして、窒素が増えすぎると、様々な弊害が生じます。

例えば、病気にやられやすくなったり、収量が低下したりします。

また、野菜の品質も落ちます。

野菜の栄養分が少なくなったり、腐りやすくなったりします。

さらに、野菜の中の硝酸濃度が高くなり、人体にも有害となります。

硝酸が、体内の酸素供給を妨害し、酸欠状態となります。

ただし、これについては有毒でないという報告もあり、何が本当なのかよくわかりませんが、やはり有毒と考えていた方が無難でしょう。

窒素の他にも、カリも過剰になりやすいですし、その他微量に含まれている重金属類も蓄積されて害を及ぼす可能性があります。

では、最適値はどのように決められるか、ですが考え方は二つあります。

一つは必要な養分は全て化学肥料で賄い、堆肥は物理性(団粒構造増進)や生物性(有害微生物の繁殖防止)の改善のみを目的として使う、というものです。

この時の量として、先ほどの平米2kgという値が出ます。

これは、実験によって求められた量です。

堆肥を投入する最初の年の収穫量は、もっと多量の方が収穫量が多くなりますが、何年も継続していくうちに、2kgというのが最適となるそうです。

別の考え方として、必要な養分の一部を堆肥で賄うという考えもあります。

このときは投入量に気をつける必要があります。

化学肥料と堆肥の、養分を吸収する割合(肥効率と呼ぶ)を掛け合わせて代替しなければなりません。

これは、化学肥料よりも堆肥の方が、養分の効きが少ないためです。

堆肥の肥効率は、資料により様々ですが、大体窒素が20%、リン酸が100%、カリが65%くらいです。

これをもとに、尿素10g分を0.5%の窒素を含む堆肥で置き換えるとしてみましょう。

尿素は窒素を約47%含んでいるので、尿素10g分は窒素4.7gに相当します。

堆肥の窒素の肥効率は20%として、尿素からの窒素4.7gは堆肥からの窒素23.5gに相当します。

とすると、堆肥は4700g必要、という計算になります。

式に直して、10g×47%=4700g×0.5%×20%

文章で書くと煩わしく感じるかもしれません。

もっと複雑な、野菜の種類別に要求成分量まで勘案した計算もありますが、これの計算シートをインターネット上で配布しているようなので、興味のある方はご利用する手もあります。

ただし、肥効率自体、資料によりかなりずれがあるし、他にも外乱要因が多く、このような精密な計算にどの程度意味があるか疑問には感じます。

実際には、何年か続けて、作物の生育状況を見ながらチューニングする必要があるでしょう。

何はともあれ、このようにして堆肥を投入する量を計算したとして、ではどのように施すかというと、これも色々な方法があります。

最も一般的なのは、畑全面に施して、そのあと耕耘して土と混ぜ合わせる方法で、上述の平米2kgといった量はこの方法が前提です。

しかし、この方法は多量の堆肥が必要で、運ぶだけでも大変です。

堆肥でも全面散布は、植物が利用しない部分が多くムダな気がします。

減らしましょう。

私の知る中で一番少量で済む方法は、使わないことですが、これを除くと植穴に入れる方法が節約効果が高いです。

ポット等で育苗した野菜を定植する際に、植穴を掘って、そこに堆肥や肥料を施用してから定植します。

この時の堆肥の投入量としては、育てる野菜にもよりますが、一穴に40gくらいが一般的なようです。

1mの幅の畝に30cm間隔で2条植えにするとすれば、必要な堆肥量は260g程度となり、前述の2kgに比べて大幅に節約できます。

ある程度規模が大きくなって、一々チマチマとやっていられないという場合は、畝となる部分だけに堆肥を撒いて、その後トラクター等で畝立てすれば、投入が畝部分だけになって節約出来ます。

なお、このような使い方とは別に、マルチ代わりに堆肥を敷くという使い方もあります。

これは水分を抜けにくくしたり、地温の低下を抑えるといった、
ふつうのマルチと同じような効果が期待できます。

ふつうのビニールマルチよりは簡便に出来ますし、その後鋤き込めば土にもよいです。

また、上述の様々な施用と併用することも可能です。

参考にした本

農文協編  堆肥とことん活用読本  農文協

藤原俊六郎  堆肥の作り方・使い方  農文協

西尾道徳 堆肥・有機質肥料の基礎知識 農文協

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2 件のコメント:

  1. 堆肥は化学肥料に換算する計算式だけでは割り出せないものがあると思いますよ。
    一雨降れば流れてしまう化学肥料に比べて地力的に効いてくれる堆肥は土づくりの王様だと思いますが・・

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  2. そうですね。

    単純に量を合わせる、というだけでは不十分だと私も思います。

    でも、投入量を決めるためには何かの目安が必要なので、それを便宜的に決めるために計算式を持ち出す必要があるのだと思います。

    それにしても、堆肥の使い方は奥が深くて難しいですね。

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