2010年11月10日水曜日

雑穀について、その2

前に雑穀について書きましたが、全般的な話に終始したため、個々の雑穀については述べられませんでした。

そこで今回は、ヒエ、アワ、キビ、タカキビに絞って個々の雑穀の特徴を述べていきたいと思います。

まず、イメージを明確にするために、それぞれの雑穀の粒の見た目について述べます。

大きさはアワが一番小さく2mm弱で、次にキビとヒエが同じくらいで2mm強、タカキビが最も大きく3〜4mmくらいです。

ヒエとアワは玄米のような色、キビは黄色っぽく、タカキビは赤っぽい色です。

形はいずれも球状ですが、タカキビは粒が大きい分、ややいびつです。

日本での栽培は、タカキビが最も新しく平安時代頃に、中国か朝鮮半島から伝わってきたようです。

次に新しいのがキビで弥生時代。

ヒエやアワは稲よりも古く、縄文時代にはすでに栽培されていたそうです。

このような歴史の重みのせいか、ヒエやアワは神話や昔ながらの風習によく出てきます。

たとえば、勤労感謝の日はもともと新嘗祭といって、天皇が国民を代表して大規模に行われる収穫祭でした(今もそう?)が、この場でも米とアワが同格でお供えされます。

また、正月の満月の日には、粟穂稗穂という飾りをつくって豊作を祈念するという行事もありました。

少し変わったところでは、その満月の日に夫婦が裸で囲炉裏のまわりをぐるぐる回りながら豊作の前祝をする、というようなこともされたようです。

このように、昔から重要な食料として栽培されてきた理由としては、前回も述べたとおり、収穫が安定していて作りやすいことが考えられます。

基本的には種さえまけば、あとは何もしなくても収穫まで迎えられます。

といっても、相当量の収穫量を挙げるためには、やはりきちんと肥培管理や除草をしなければなりませんが。

個々の栽培方法の特徴を述べると、まずヒエは水田でも畑でも栽培できます。

寒冷地や、冷害の年でもできるので、これがヒエ(冷え)という名前の由来になったそうです。

ただし、このように育てやすいということは、逆にいえばヒエを育てたくない時に生えてしまったら、駆除が難しい、ということにもなります。

水田で稲作するときなどは、ヒエの一種のタイヌビエが生えますが、これは厄介な雑草として知られています。

イネと、ほとんど見た目が変わらないことが、除草をさらに困難にします。

アワ、キビ、タカキビはいずれも畑で作ります。

やはり丈夫な作物ですが、アワとタカキビには、アワノメイガやアワヨトウ等の害虫に食害されることがあります。

アワノメイガについては以前にも述べましたが(第39号)、トウモロコシ、特に最近の糖度の高いスイートコーンには壊滅的な被害をもたらすことも多いです。

雑穀では、そこまで大きな被害はありませんが、アワの後にトウモロコシ、といった輪作はしないほうが無難と思われます。

キビについては、害虫の被害は少ないのですが、鳥害が激しいです。

雑穀は一般に鳥害が激しいですが、キビについては特にスズメの害がはげしいです。

以前、私もキビを栽培したことがありますが、全く収穫できなかったこともあります。

収穫作業で、キビの穂を刈り取ってネコグルマ(荷台付き手押し一輪車)に乗せていたら、スズメがネコグルマの上にまで乗って食べにくるのです。

人間が近づいてきてもなかなか逃げようとしません。

ようやく追い払ってネコグルマを動かすと、穂の中に潜り込んでいたスズメが飛び出してきてびっくりしたこともあります。

従って、逆にスズメを収穫したい場合は、キビをおとりに使えばよいかもしれません。

収穫した後は、精製して食べられる形にしますが、これはなかなか大変な作業ですが省略します。

最後に利用方法について述べます。

メジャーな食べ方としては、どの雑穀も似たりよったりで、お米に少量入れて混ぜ飯にしたり、おかゆにしたりします。

つぶつぶのままでなく粉にすることも多いです。

粉にしたものは、団子にしたりお菓子にしたりします。

また、お酒や味噌など、発酵食品の原料にすることもあるようです。

人間の食用以外の利用方法としては、鳥のエサというのがあります。

また、家畜の飼料用に雑穀を食べさせることもありますが、タカキビは幼苗の時には青酸を多く含む飼料利用には、保管して乾草にしてから食べさせる必要があります。

実以外の茎や葉が大部分なので、これを堆肥にするのも有効です。

また、タカキビは実をしごいた後の穂の部分をほうきにすることも出来ます。

参考にした本

及川一也 新特産シリーズ 雑穀 農文協

私が雑穀類を作りはじめた時に教科書にしていた本です。

分かりやすいです。

※もしよろしければクリックをお願いいたします。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 新規就農へ人気ブログランキングへ

3 件のコメント:

  1. 「満月の日に夫婦が裸で囲炉裏のまわりをぐるぐる回り
    ながら豊作の前祝いをする」という行事について、具体
    的にどの土地のことなのか教えていただけませんか?
     私もこの行事に関心を持って、青森県から鳥取県まで
    の事例を集めたことがあり、Googleなどで「裸回り」
    「安田尚道」をキーワードとして検索していただくと、
    私の書いたものを読んだり印刷したりすることができ
    ます。
                        安田尚道

    返信削除
  2. 安田先生

    おはようございます。

    お問い合わせいただき、大変恐縮しております。

    投稿した内容の具体例は、今あいにく、資料が手元にないのですが、来週ごろには分かると思います。

    分かりましたら、またこちらのコメント欄に書き込みさせて頂きます。

    ただ、さほど詳しくは書かれていなかったので、先生の集められた事例に包含されているとは思います。

    以上、よろしくお願い致します。

    返信削除
  3. 安田先生 おはようございます。
    昨日資料を調べてみましたところ、先生も引用されている、飯島吉晴先生の要約にあったもので、具体的な地名は書かれていませんでした。
    どうもお役に立てず、申し訳ありませんでした。

    返信削除