2010年11月17日水曜日

完熟堆肥と未熟堆肥

今回は、堆肥について述べてみたいと思います。

野菜づくりをする際には、堆肥をたっぷりと入れて、ふかふかの土づくりをしましょう、とよく言われます。

天然素材由来であり、地球に優しい気もします。

で、実際のところ堆肥を使うと何がいいかというと、案外よくわからない所も多いですね。

堆肥という資材の曖昧さ、多様性に起因するものと思われます。

そこで調べてみたところ、大きく次の3つに分けられることが分かりました。

1)物理性の改善
2)生物性の改善
3)化学性の改善

このうち、1)と2)は分かりやすいと思います。

1)物理性の改善

堆肥の中に含まれる栄養分を、微生物やミミズが食べて、接着効果のある物質を分泌することにより、土が団粒構造を持ちます。

団粒構造により、団粒の中の水分が蒸発しにくくなるとともに、粒と粒の隙間から水分が出やすくもなり、水はけも水持ちもよい土壌となります。

2)生物性の改善

堆肥の栄養分により、微生物が多数繁殖するようになります。

いろんな菌が活発に繁殖することにより、有害な微生物だけが爆発的に繁殖するのを防ぐことが出来ます。

3)化学性の改善

肥料成分に関するものですが、これが少し分かりにくく感じます。

化学性の改善と一言でいっても、実際はいくつかの効果が複合しています。

まず、堆肥そのものに肥料効果があります。

堆肥の種類にもよりますが、主要三成分について述べると、チッソ成分は0.3〜0.5%、リン酸は0.2%、カリは0.6%くらい含まれています。

ただし、肥料としての効き方については、成分によって変わります。

カリ成分は、水に溶けやすい形で存在しているため、即効肥料と同じような効き方をします。

これに対し、チッソはやリン酸は有機物の中に取り込まれているので、すぐに溶けてでてくる量は限られており、緩効肥料のような効き方となります。

さらにC/N比という指標もあります。

これは、堆肥に含まれる炭素分と窒素分の比率を示したもので、大雑把にいうと20を境に性質が変わります。

20を超えると、土に施した時に微生物が土壌中の窒素分を取り込んで繁殖するために、植物がチッソを吸収できなくなります。

これをチッソ飢餓といいます。

20よりも小さいとチッソ濃度が高まって、植物が栄養として吸収できるとされています。

ただし、材料によって有機物の分解のしやすさは様々なので、C/N比はあくまで大雑把な目安に過ぎません。

それから、別の化学性の改善効果として、堆肥により保肥力が高まることが挙げられます。

例えば、炭素分の少ない、やせた土地で肥料を施したとすると、肥料分は雨などで流されてしまい、植物に十分取り込まれない、ということになりがちです。

しかし、堆肥をしっかり施した場合は、その肥料分が土に吸着されて、雨などの多量の水でもしっかりと固定されて流れ去ることがなくなり、長期間肥料分として保持されます。

さらに、リン酸の効きもよくするという効果もあります。

これは、土の中の有害なアルミ分を固定することによります。

化学性の悪い土壌では、リン酸肥料を入れても、アルミとくっついてリン酸アルミという物質になり、植物が吸収できなくなってしまいます。

しかし、堆肥を入れると、その成分がキレートという形でアルミを固定することによりリン酸が自由になり、植物に吸収されやすくなります。

と、このように様々に有効な働きをする堆肥ですが、これはしっかりと腐熟させたものを用いる必要があります。

未熟な堆肥を用いると、痛い目を見ることがあります。

だいぶ前のニュースで、印象に残ったものがあります。

有機農業で堆肥をふんだんに使って育てていた野菜が、除草剤起因と思われる生育障害を起こした、というものです。

原因は、外国から輸入した牧草の中に除草剤成分が入っており、これを食べた牛の糞、さらにそれを堆肥化した資材の中にその成分が残留していたため、ということです。

これは極端な例ですが、十分な分解の進んでいない堆肥では、このような有害成分を持ち込む可能性が高まります。

例えば、雑草の種や、病気の原因となる微生物などです。

この他の害としては、堆肥を施した後に土の中で急激に分解して、植物の根が障害を受けたり、チッソ飢餓になる可能性が考えられます。

従って、堆肥を使う際には完熟しているかどうかしっかり見極める必要があります。

見分け方で最もよいのは、堆肥の成分を抽出し、それを脱脂綿に含ませてその上に種を蒔き、植物の発芽や生長状態を育ててみることです。

でも、これはちょっと手間がかかりすぎて、やる気が起きませんね。

そこで、もっと簡便な方法で、かつ道具を使わずに判定するとすれば、以下のようになります。

1)色を確認する
もともとの原料の色が消え、黒くなっているほど熟しています。

2)匂いかいでみる
アンモニア臭がせず、堆肥特有の香り(ちょっと文章では表現しにくいですが)がします。生理的に素直になって、嫌な匂いがすれば未熟、いい臭い感じれば完熟、ということで大体あっていると思います。

3)水分
完熟していれば、手で強く握っても水分があまりつきません。

4)形
完熟していれば、原形を留めていません。


参考にした本

藤原俊六郎 堆肥の作り方・使い方 農文協


西尾道徳 堆肥・有機質肥料の基礎知識 農文協

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1 件のコメント:

  1. キビゴロウさま。
    相互リンクありがとうございました。


    これからもよろしくお願いします。

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