これまで、雑草についてずっと調べてきました。
そろそろ飽きてきたので、今回は「雑」の字つながりで雑穀について述べることにしました。
雑穀といえば、最近では五穀米とか十穀米とか言って、健康食品としてブームになっていきているようです。
(ちなみに、「五穀米」とは食品会社の登録商標で、固有名詞です。「食塩」や「サランラップ」の類いです。)
では、雑穀とは何かというと、定義はあいまいなようです。
最も狭い意味では、主穀(イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ)以外のイネ科の穀物のことですが、これらにマメやゴマなど、イネ科以外の植物を含めることもあります。
マメを含める時は菽穀(シュクコク、菽はマメの意味)、それ以外を含める時は擬穀(ギコク)という難しい呼び名があるようです。
また、雑穀という呼び名は昔はなく、五穀と呼ぶことが多かったようです。
そしてさらに、この五穀も、定義はあいまいです。
例えば日本書紀ではイネ・麦・ヒエ・アワ・マメを指し、古事記ではイネ・麦・アワ・ダイズ・アズキを指しています。
何はともあれ、これらからも分かるように、当時は雑穀をイネや麦と同列に扱っていました。
それが豊臣秀吉が太閤検地をして、石高制ができたあたりからイネの価値が高まってきて、相対的に雑穀類の価値が低下し、イネと区別されるようになったそうです。
では、なぜイネより価値が低いとされたか、理由を考えてみると、雑穀にはいくつかの欠点が挙げられます。
まず、コメに比べてあまり食味がよくないことが挙げられます。
ボソボソとしていて固く、消化も悪いです。
ただし、これらはコメと同じような炊き方をして食べた場合で、雑穀に合った調理をすれば、必ずしもそうでもなさそうです。
それからもう一つの欠点として、収穫量が少ないことも挙げられます。
現在では、コメは一反(10アール)あたり、平均で600kgくらい取れますが、雑穀では(種類にもよりますが、)多くて200kg〜300kgくらいです。
こういった理由から稲作が奨励され、また高付加価値な穀物としてコメが他の雑穀と区別されたものと思われます。
しかしながら、雑穀にも様々な有用な点があります。
まず、栄養価が高いことです。
コメ(精米)と比べるとビタミン、タンパク質、ミネラル、食物繊維が多く含まれています。
昔の話ついでに、江戸時代の武士は、精米した米食主体の食生活をしていたため、ビタミンが不足気味になっており、その結果、脚気が流行していたそうです。
これに対し、地方の庶民は麦や雑穀食が主体だったので、脚気とは無縁でした。
さらに、雑穀のもう一つの重要な利点は、栽培が容易で収穫が安定していることです。
痩せ地でも栽培可能な上、干ばつや病害虫にも強いです。
先ほどコメの方が収穫量が多いと述べましたが、収穫量の安定性については雑穀の方が優秀です。
さらに、保存性もよく、穂のまま束ねていても害虫がつきません。
ちなみに、私もキビ、タカキビ、コムギ等を栽培したことがありますが、コムギはよほどしっかり密閉しておかないと、コクゾウムシが来て困ることになります。
これに対して、タカキビなどはずっと放っておいていますが確かに虫にやられた形跡はありません。
このように栄養価が高く育てやすい、となれば雑穀を自分で栽培してみたくなるものです。
五穀米や十穀米のように、パックを買ってきて食べるのもいいですが、1種類だけでも自分で作り、苦労して精製してお米に入れるとおいしさも格別です。
参考にした本
増田昭子 雑穀を旅する 吉川弘文館
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