種の発芽について調べてきましたが、種と言えば今まで疑問に思っていたことがありました。
雑種強勢についてです。
雑種強勢とは、異なる品種間の作物を掛け合わせると、もともとの親よりも優れた特性があらわれることです。
例えば、品種Aのトマトの苗から実が100個、品種Bのトマトの苗から実が80個とれたとして、品種AとBを掛け合わせたものは150個取れた、というようなことがあります。
なぜ、両方の親よりも沢山できるのか、不思議です。
ちなみに、家畜は雑種を作っても、このように収穫量が増えることはないそうです。
ただし、生育が揃ったり、病気に強くなったり、というようなメリットは大きいので、雑種強勢による育種はよく行われています。
もちろん、植物でも利用されています。
雑種強勢を利用して作られた種子は、F1と呼ばれます。
これは雑種(filal)の第1世代という意味で、第2、第3世代はF2,F3となりますが、これらは生育がばらつきます。
従って、利用されるのはF1のみです。
よく、種袋に「○○交配」と書いてあるのはF1の種子です。
それで、なぜ雑種強勢が生じるかというと、二つの説があります。
一つは、超優性説というもので、以下のようなものです。
まず、多くの動植物の遺伝子は対になっていて、オス、メス両方の親から1セットずつもらいます。
その中の、例えば花の色を赤くする遺伝子と白くする遺伝子があるとして、
赤くする遺伝子と赤くする遺伝子がセットになっていれば赤くなります。
白くする遺伝子と白くする遺伝子がセットになっていれば白くなります。
赤くする遺伝子と白くする遺伝子がセットになっていれば、色んな場合がありますが、結果として赤くなったとすると、赤の遺伝子の方が優性遺伝子、白の遺伝子の方が劣性遺伝子と呼ばれます。
ちなみに、これは、赤の遺伝子が白の遺伝子を圧倒するから赤くなるわけではなく、赤くする遺伝子がもう一つの遺伝子と作用を及ぼしあうことにより赤くなるそうです。
で、超優性説というのは、このような異なる遺伝子が作用を及ぼすこと自体が、植物の生育を旺盛にする、という考えです。
これ以外に別の考え方もあります。
優性遺伝子連鎖説というものです。
先ほどの例では花の色について書きましたが、これ以外にも花の形や花びらの数、その他色んなことを決める遺伝子が沢山あります。
これらの多くが異なる種類の遺伝子のペアとなると、優性な遺伝子の数が増えます。
それらの優性な遺伝子が作用を及ぼしあうことが雑種強勢の元となる、という考えです。
これら二つの説のどちらが正しいか、あるいは両方正しいかについてはまだ未解決だそうです。
以上長々と書きましたが、結局の所、 分からないということで、わざわざここまで読んで下さって恐縮です。
遺伝の世界は奥が深く難しいですね。
参考にした本
山田実 作物の一代雑種 養賢堂
・・・難しい内容なりに、興味深い内容も多く、おもしろく
読めました。
松尾孝嶺 育種学要論 養賢堂
・・・カラーの口絵の写真に惹かれて手に取りました。
「放射線育種物のγー圃場の全景(茨城県大宮町)」という
写真があり、山の中に不自然に真円状の圃場があります。
自然の中の不自然さに、軽いインパクトを感じました。
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