2010年12月30日木曜日

日本農業の現状と展望、その1

大仰なタイトルになってしまいました。

今年もあとわずか。

もうすぐ新しい年が始まるので、一年の変わり目に際してそれらしい話題を考えてみました。

今回は、まずこれまでの現状を振り返り、新年になったら業界の展望というか、私の妄想する理想型について考えてみたいと思います。

さて、現在の日本の農業は、様々な面で危機に瀕していることが指摘されています。

問題点は一つのみでなく、自然環境や社会環境、さらにその中でも政治面、経済面、文化面と多岐に渡ります。

自然環境については、例えば地球温暖化やゲリラ的な暴風雨等の異常災害があります。

今年は 夏の記録的な猛暑や奄美地方での大雨被害が記憶に新しいところです。

春先の異常低温で農作物被害は約100億円になった、との報道もありました。

世界的に見ると、地球規模での砂漠化も進行しています。

これにより大陸から黄砂が飛来して農作物、健康に被害を及ぼす恐れも指摘されています。

と、問題点ばかりのようですが、本来持っている日本の国土の特徴としては、必ずしも不利な要素ばかりではありません。

降雨に恵まれており、現時点では砂漠化の進行は認められません。

また、対馬海流や黒潮等の暖流が走っており温暖です。

このため、総じて植物の生育しやすい有利な土地柄です。

北海道から沖縄まで南北に細長く、海に囲まれている上に山も多く、変化に富んだ気候となっています。

従って、地域により特色のある作物を栽培することが可能です。

もちろん裏を返せば、平地が少ないため、農地は狭小になる、温暖であるため病害虫が発生しやすい、というデメリットもありますが、一般に恵まれた気候と言えるかと思います。

次に、社会環境面に目を向けると、やはりここでも種々の問題が指摘されています。

まず戦後から現在までの流れを見てみると、終戦直後は食糧難から農業生産の拡大に向けた取り組みが種々なされて、しばらくの間は農業人口も増えていました。

ところが、そのうち高度経済成長により、商工業に産業の主体が移って、農業人口は減少に転じました。

政策面でも農業基本法が制定され、農業人口を減らして大規模化することにより生産効率を高める方針が示されました。

農業を始めたい人には、様々な参入障壁が設けられました。

新規参入する際には、農地法で一定以上の農地を耕作する必要があることや、農業委員会の審査を受けなければならないこと、等です。

しかし、最近では農業人口の減少が激しくなり、見直しの動きも増えてきました。

上記の農地面積も、多くの地域で面積が縮小されたり、それまで認められていなかった企業も農業に参入できるようになりました。

それでも農業人口の減少は止まらず、今年行われた調査では、農業人口減少幅が過去最大となる、というニュースもありました。

また、経済のグローバル化が進む中で農業もこの流れにもまれ、安価な海外の農産物が大量に輸入されています。

その結果、食糧自給率は40%程度まで低下するとともに、農家も終わりのない低価格競争に巻き込まれ、農業所得の低下要因となっています。

農家の経済的自立は厳しい状況です。

さらに、今年の話題としては、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定、関税をほぼ撤廃して自由貿易圏をつくる構想)に日本も参加する動きがありますが、これにより農業は大ダメージを受けるとの懸念が持たれています。

さらに、グローバル化については、農産物そのものだけではありません。

「今の農産物は油と石から出来ている」といわれるように、最近の農業では化学肥料が多投されています。

この化学肥料のリン酸とカリはそれぞれリン鉱石とカリ鉱石、チッソは石油起因のナフサから、いずれも輸入により供給されています。

今年はレアアース輸出規制が大きな話題となりましたが、リン鉱石についても最大の産出国である中国で、今月から輸出規制をはじめました。

石油依存性については言わずもがなです。

トラクター、コンバイン等の農機、トラックを始めとした輸送手段、ポリマルチ等のビニール素材等有象無象に石油由来の製品が使われています。

ついでに言えば、堆厩肥にしても、もとは牛糞や鶏糞ですが、牛や鶏のエサは大半が米国から輸入した穀物ですし、油かすについては原料となるカノーラも北米、オーストラリア等からの輸入です。

以上のように、多くの原材料は輸入に頼っている状態です。

従って、原料価格の高騰は、直接間接に農家の収入を圧迫することになります。

これらの厳しい状況を背景に、農家を保護するためのさまざまな政策面での優遇措置も行われています。

今年は、新しい食料・農業・農村の基本計画が策定され、「戸別所得補償制度」、「農業・農村の6次産業化」、「品質、安心・安全、環境など消費者ニーズに適った生産体制」の3つが示されました。

そして4月から稲作農家を対象に戸別保証制度がスタートし、来年からは畑作農家にも拡大される予定です。

ちなみに、これに類似する制度は欧米でも行われており、イギリスを始めとする欧州諸国の食料自給率の引き上げに大きく寄与したとされています。

最後に国内需要に目を向けて見てみますと、ユーザーからは健康、安全、低価格指向という姿勢が示されています。

遺伝子組換え食品等の新技術についても、安全性の観点から敬遠しがちです。
(もっとも、上述のカノーラや家畜飼料を初めとして、遺伝子組換え作物はかなり輸入されているようですが)。

また、景気の冷え込みから外食産業が停滞、内食への回帰も見られます。

健康、安全といった高付加価値と低価格との狭間で食品偽装問題も顕在化しています。

今年は昨年に比べてれば少なかったですが、それでもイトーヨーカ堂でのウナギの産地偽装問題や、直近では九州産牛肉を松坂牛と偽装した事件が発生しました。

一方で日本の消費者は、不景気といえども比較的経済状態はよく、また食への関心も高まっているという面もあります。

生産者と消費者がコミュニティをつくって食品の生産支援と提供を行う取り組みが増えたり、生産者直売所等、生産者と消費者が直接取引するしくみが増えてきています。

以上のような現状を踏まえて、次回は将来の農業のあり方について述べてみたいと思います。

参考にした資料

蔦谷栄一 日本農業のグランドデザイン 農文協


多くのデータをもとに緻密な論証を行っており、大変説得力があります。

農業事情研究会編  農業業界大研究  産学社


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