前回は、種の発芽について述べました。
今回は、これに引き続いて、発芽を早めるための処理について述べます。
まず、前回の話を復習しますと、発芽するまでの過程は以下のようになります。
1)種は成熟後いったん休眠する
2)主にシベレリン(発芽促進)とアブシジン酸(発芽抑制)の量のバランスで休眠や発芽がコントロールされる
3)休眠は、低温によって解除される
4)発芽過程は、吸水によって始まる
これらをもとに、発芽させやすくするためにいくつかの対策が考えられます。
1)低温処理
低温で休眠からさめることを利用した処理です。
これには、温度とともに湿度も重要で、低温かつ湿潤状態が必要な場合が多いです。
しかしながら、これとは別に乾燥状態で高温に置くことにより休眠からさめるものもあり、種子の種類によって異なるようです。
低温湿潤処理で発芽しやすくなる植物としては、オオムギやイチゴなど、高温乾燥処理で発芽しやすくなる植物としては、落花生やホウレン草などが知られているようです。
ホウレン草は水につけた後冷蔵庫に入れると発芽しやすくなると言われていて、実際に自分でやってもその通りの結果になるのですが、上述のような逆の調査結果もあり、ちょっと混乱してしまいますね。
物好きな方は、高温乾燥処理もやってみて下さい。
60℃で2日置けばよいそうです(責任は持ちませんが)。
2)発芽を促進させる物質を処方する
種に含まれる、シベレリンという物質が発芽を促進することから、これを外部から与えてやることが有効と考えられます。
従って、シベレリンの水溶液に種を漬けることが行われており、これをシベレリン処理と言います。
余談ながら、ブドウの房に、このシベレリン処理を行うと、受粉しなくても着果して種無しブドウができるそうです。
また、発芽を促進するためには、シベレリン処理以外にもチオ尿素や硝酸カリウムのようなチッソ化合物も有効です。
このメカニズムについては明らかになっていないようですが、これらの水溶液に種を漬けると、種の中で一酸化チッソが作られ、これが発芽を促進する働きを持つ、とされているようです。
さらに、エチレンやサイトカイニンといった植物ホルモンも発芽しやすくする働きがあります。
3)磨傷処理、皮除去
発芽するためには吸水したり、呼吸のため酸素を取り込むことが必要ですが、種皮が水や酸素分を通りにくくしている場合があります。
従って、種皮をとってしまったり、傷を付けることにより、これらが通りやすくなって発芽しやすくなります。
ちなみに皮を取ってしまった種をネイキッド種子と呼びます。
4)その他
前回の発芽の過程では出てきませんでしたが、光により発芽しやすくなる種としにくくなる種があることも知られています。
前者は好光性種子、後者は嫌光性種子と呼びます。
好光性種子は、種の成熟状態、発芽温度など色々な要因で効果が変わってきますが、低温で効果的なようです。
また、ハードニングという処理も行われます。
これは吸水と乾燥を繰り返すことにより発芽しやすくなったり、発芽後の乾燥に強くなったりするという効果を狙ったものです。
ハードニングにより、胚乳の貯蔵物質を分解する酵素の活性を高め、発芽する際のエネルギーを供給しやすくするためとも言われています。
以上、発芽を促進する方法について調べてみましたが、種の種類によって条件がいろいろと異なってしまうようでした。
従って、個別の種については、別途好適条件を確認する必要があり、あまり参考にならなかったかもしれませんがあしからずご了承下さい。
参考にした本
鈴木善弘 種子生物学 東北大学出版会
吉岡俊人 清和研二 発芽生理学 文一総合出版
※もしよろしければクリックをお願いいたします。
↓
0 件のコメント:
コメントを投稿