カメムシといえば、真っ先に思い浮かぶのはあの臭いニオイですね。
このニオイは、何とも形容しようのない独特なもので、一度嗅いでしまうと忘れられません。
トランスー2ーヘキセナールという成分で、これは毒性も強いそうです。
カメムシを密閉容器の中において、においを出させると死んでしまうこともあるそうです。
従って、カメムシは普段からこのニオイを出している訳ではなく、外敵から身を守ったり仲間とのコミニュケーションを取ったりする時に使います。
ニオイの成分を、一度に多量に出すと警戒の印で、周りのカメムシたちは一斉に逃げ出し、少しづつ出すと集合の合図で仲間が寄ってくるそうです。
でもカメムシは、このニオイのせいで害虫扱いされている訳ではありません(農業では)。
ニオイだけなら、人によっては不快でない場合もあるでしょう。
例えば、香辛野菜のコリアンダー。
これはギリシャ語でカメムシを意味するcorisを語源に持ちます。
その名の通り、カメムシの臭いがする野菜ですが、中国や東南アジアでは好んで食べられます。
ニオイも好まれているようです。
話は戻り、カメムシの害でもっとも重大なのは、斑点米です。
稲穂が熟し始めるときに汁を吸うと、米に褐色~黒色の斑点ができ、商品価値が大きく損なわれてしまいます。
他にも果樹や野菜の実、茎を吸汁して変色させたり、変形させたり、あるいは病気を媒介したりします。
このような被害は、様々な理由により最近増える傾向にあります。
一つ目は、管理が不十分となった休耕田の増加です。
カメムシは、自分が食べやすい食料を求めて、転々と植物間を移動しますが、休耕田でイネ科の雑草が繁茂してエサが潤沢となったためです。
稲の作付け体系が、種々変わってきたことも原因として挙げられます。
通常、春の雑草が枯れた後の6~7月頃にはエサが少なくなって、カメムシは色んなところを移動するようになり、その後、早期栽培の稲が出穂しはじめると、これを吸汁しにカメムシがやってくるという訳です。
さらに、カメムシは杉やヒノキを好む虫で、そこで繁殖したり越冬したりすることが知られています。
従って、杉やヒノキの植林がカメムシの住処を提供したとも言えます。
あとは、地球の温暖化。
特に、冬期の最低気温が高くなってきたため、今までは寒さで越冬できなかった種類のカメムシ(ミナミアオカメムシ、他)が、北上してきたこともあげられます。
ただし、夏は温度が高くなりすぎて、これらのカメムシでさえも暑すぎて障害を受けることはあるようです。
このように見ていくと、カメムシが増えているのは(地球の温暖化も人為的なものだとすれば)全て、人間が原因を作り出しているのですね。
参考にした本
藤崎憲治 カメムシはなぜ群れる? 京都大学学術出版会
・・・「カメムシがなぜ群れるか」という一点について書かれた、ものすごくマニアックな本ですが、分かりやすく書かれています。
所々にコラムや研究活動中の思い出話等も書かれていて、面白く読めます。
植物防疫講座 第3版 害虫・有害動物編 日本植物防疫協会編
・・・害虫の防除に関する教科書的な内容の本で、参考になります。
防除法のみならず、害虫の生態等についても詳しく述べられています。
※もしよろしければクリックをお願いいたします。
↓
0 件のコメント:
コメントを投稿