2011年6月3日金曜日

不耕起栽培の海外事情 その2

海外の不耕起栽培 その1からの続きです。

前回の話を少しおさらいすると、不耕起栽培は米国で最も普及しています。

米国は、耕耘し過ぎによる土壌の消耗が大問題となり、これが原因で普及していきました。

ヨーロッパでは、普及はさほど進んでいませんが、その中ではフランスで、全農地の1/3程度が不耕起栽培の農地になっているとされています。

ここで、疑問が湧いてきます。

フランスで普及するのは、何か原因があるのでしょうか?

米国とフランスで、共通点があるのでしょうか?

実は、米国とフランスには、世界規模の製薬会社があります。

アメリカではモンサント、ヂュポン、ダウ・ケミカル等々、

フランスではアベンティス(今はドイツのバイエルに買収)。

この他ではスイスのシンジェンタ社が大きいです。

そして、これらの会社は、いずれも遺伝子組換え作物の種子を販売している会社です。

特に大きなシェアを持つのが、アメリカのモンサント社です。

ここは、除草剤のラウンドアップで有名な会社です。

そして、遺伝子組換え作物をかなり強引な方法で推進している会社でもあります。

ということで、遺伝子組換え技術と不耕起栽培は大きな関わりを持っています。

不耕起栽培の一番の弱点は、雑草です。

この雑草退治に除草剤を使用します。

通常は、生えてくる雑草の種類は多岐にわたるので、非選択性(=接触した全ての植物を枯らす)除草剤を使います。

しかし、そうすると肝心の作物まで枯れてしまいます。

そこで、遺伝子組み換えにより、その除草剤を効かなくする遺伝子を組み込んだ作物の種子を使うという訳です。

メーカー側にとっては、種と農薬をセットで販売できるので、とてもおいしい話です。

生産者側にとっても、農薬と種代よりも耕耘と除草コストの削減(、それに政府からの補助金)の方がメリットが大きい、ということのようです。

ただし、この方法にも弱点があります。

同じ除草剤をずっと使っていくと、そのうちに雑草がその除草剤に対して耐性を持ち始める、すなわち効かなくなる、ということです。

これを防ぐために、メーカーは別の種類の農薬を次々と開発する必要があるそうです。

(ということは、生産者側も新しい種や農薬を次々と買替えることになります。)

また、同一作物による特定の雑草の繁茂を防ぐために、輪作をすることも推奨されます。

しかし、輪作をすると、前作の作物自体が雑草化した場合、除草剤が効かないという問題もあるようです。

こうして見ていくと、日本の不耕起栽培は、自然農法や有機栽培の延長線上にあるようにおもわれますが、海外のものは、むしろ農薬を多投する、有機栽培とは対極的な方法のようですね。

以上、日本の不耕起栽培とはあまり関係ない話ばかりになりました。

少しは参考になりそうな情報はないかと探してみたところ、不耕起栽培には、上記の他に、以下のようなデメリットというか、注意点があることが分かりました。

最後に示しておきます。

1)不耕起栽培を始めて最初の数年は、肥料を従来よりも増やす必要がある

・・・チッソ飢餓(土壌の微生物が増えて、微生物が窒素を吸収して作物に行き渡らなくなる)のせいと思われます。

2)水はけの悪い土地では、収量が減る

・・・土が締まって硬くなり、根が伸びにくくなるためと思われます。

3)従来農法からの移行が難しい

4)思わぬ雑草、害虫が発生する事がある

5)余分な機材が必要。

・・・不耕起用の種まき機や移植機など、慣行農法のものとは異なるので導入コストがかかります。

逆に、トラクター等の耕耘機械は必要なくなりますが、これは元々多くの生産者が持っているので、導入しないというコストメリットはさほどないと思われます。

参考にした本・・・ 前回と同じ

河本桂一編 エネルギー・水・食糧危機 (別冊日経サイエンス 171)


木村康二 アメリカ土壌侵食問題の諸相 農林統計協会


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