植物の水分や養分の吸収に関する話のつづきです。
植物は、肥料成分を水に溶けた形で取り込みます。
それでは、水に溶けていればどんなものでも取り込んでしまうのでしょうか?有害な成分が入っていたら、シャットアウトするような機能は持っていないのでしょうか?
という疑問を以前から持っていたので、この機会に取り上げてみました。
調べてみると、植物はやはり上述のような機能を持っており、特定の成分だけを選んで取り込んでいるようです。
また、その選択する成分も、植物の種類によって異なっています。
代表的な例として、イネが挙げられます。
イネは、ケイ酸を吸収するのが特徴的で、好ケイ酸植物と言われます。
これは他の多くの種類の植物には見られないことです。
また、チッソ分についても、イネはアンモニアをよく吸収する、好アンモニア植物です。
多くの植物はチッソ分については硝酸イオンの形で吸収し、アンモニウムイオンの形ではあまり吸収しません。
アンモニアは、植物にとっては有毒なのですが、イネの場合はアンモニアを根でいったん硝酸に変えてから吸収するという特技を持っているためです。
このように、特定の成分を選択して取り込む仕組みは、細胞内への成分吸収の仕方の中に秘密があります。
水分が根と接触している部分を、顕微鏡で拡大して見たとします。
根の細胞の表面には細胞壁がありますが、これは水とともにどの成分も通り抜けていきます。
その内側に行くと、細胞膜があります。
この膜は、水分や電荷を持っていないもの(例えばエチルアルコールや尿素など)は通り抜けられますが、各種のイオンのような電荷を持っている物は通り抜けられません。
しかし、この細胞膜には輸送タンパク質というもの設けられており、そこで特定の成分のみが通り抜けられるようになっています。
この輸送タンパク質には二種類あります。
一つはチャンネルタンパク質、もう一つは運搬体タンパク質と呼ばれています。
チャンネルタンパク質とは穴が開いたり締まったりするタンパク質です。
普段は締まっていますが、特定の刺激(例えば電荷を持ったイオンが近づいたりすること)があると、穴が開き、その穴に合ったサイズのイオンが通り抜けられます。
水は上述した通り、このようなものが無くても通り抜けられるのですが、実際にはアクアポリンというチャンネルタンパク質を通って入ってくるそうです。
また、尿素についても、専用のチャンネルタンパク質があって、そこから取り込まれるようになっています。
もう一つの運搬体タンパク質というのは、そのタンパク質が、細胞の外にある特定の成分と結合した後、それを細胞の中に放出するものです。
これは、植物がもつエネルギーを使って、積極的に成分を吸収します。
従ってその成分の濃度が低い場合でも、吸収することができます。
と、このような機構で、植物は自分の望む成分を吸収します。
実際に私たちが育てている植物に関しては、チッソ肥料をアンモニアの形で投入するか、硝酸の形で投入するか、といったところに関しての興味になるかと思います。
前述した通り、イネに関してはアンモニアの方を好みますが、多くの畑作物、例えばトマトやダイコン、ホウレン草等は硝酸の方を好みます。
従って、畑作物に即効的に効かせたい場合は、硝酸体の肥料を用いた方がよいです。
もちろん、アンモニアの形態の肥料に投入しても肥料としては働きますが、硝酸の形態の肥料に比べてより少量でも障害が出やすくなります。
その代わり、硝化菌によっていずれ硝酸に変わっていき、その時点で植物に取り込まれますので、肥効が緩やかになります。
ついでに言えば、尿素はウレアーゼという酵素によって、アンモニアに分解されるので、直接吸収する以外はアンモニアの形態の肥料と同じような働きとなります。
この他、石灰についても好石灰植物と嫌石灰植物というのがあることが知られています。
好石灰植物としては、ダイズ、落花生等のマメ科植物、嫌石灰植物としてはツツジが知られています。
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