だいぶ以前に、箕(み)について書きましたが、今回久しぶりに昔の道具として、篩(フルイ)について取り上げます。
網目に粉を通して、その網の目の大きさよりも大きいものと小さいものを選り分ける道具です。
色々な分野で使われていますが、農業では収穫した穀物を脱穀や籾摺りした後、食べるところとゴミを選り分けるときに使います。
台所用などの小さいものは今でも見かけますが、農家で大きなフルイを使うことは少なくなったのではないでしょうか。
フルイは網目の隙間から外が見通せることから、神秘的な道具と考えられていました。
フルイの網目から外を覗くと異界が見えるとされ、子供が神隠しにあった時などに、ふるいをかぶって探すと見つかる、と言われていました。
また、田植えの日に、フルイの上にご飯をのせて恵比寿様にお供えする、とか、脱穀が終わった後に餅をフルイに入れて米俵の上に供える、というような風習もあったようです。
ただし、箕のような風で選別する方法に比べ、フルイで選別するには時間がとてもかかります。
そのため、江戸時代には千石通しや万石通しというものが使われるようになっていきました。
千石通しとは、中国から伝わってきたもので、ふるいを斜めに傾けて上から籾摺りした玄米を流すようになっています。
玄米は、フルイの面を流れていく途中で網から下に落ちますが、籾殻はそのまま下まで流れていくことにより、選別されます。
これにより、選別作業は格段に能率が上がり、一度に千石でも処理することが出来る、という訳で千石通しという名前が付けられました。
万石通しとは、これをさらに上回る高い能率と選別効率を持つもので、我が国で発明された画期的な道具です。
千石通しに対して、万石通しではフルイが3重になっていて、籾殻はこの3重の網目によってほとんど分離されます。
万石通しの画期的なところは、一番上のフルイの目が最も小さく、二番目、三番目となるに従って網の目が大きくなることです。
普通は、最初のフルイを通した後は、もっと小さい目開きのフルイを通そうとするでしょう。
なぜ小さい網の目を通り抜けたものが、もっと粗い網の目で選別できるのでしょう?
この秘密は、籾と玄米のすべりやすさと重さの違いにあります。
まず最初の網は玄米、籾殻のどちらも通り抜けられる大きさになっています。
ここを通って落ちる時、玄米は重いのでストンと二番目の網目まで落ちますが、籾殻は軽くて空気抵抗があるのでふわふわとゆっくり落ちます。
そして、二番目の網は目が大きいので玄米はまた直ぐに落ちますが、籾殻はまだ網を通っていない玄米の上に落ちて、そこを網面に沿って流れていき選別されます。
運良くの網を通り抜けた玄米も同じ要領で三番目の網の上をすべって選別されていきます。
現在の全自動籾摺機でもこの万石通しの仕組みはそのまま使われており、当時の技術の高さが伺われます。
参考にした本
三輪茂雄 粉の秘密、砂の謎 平凡社
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