植物体内の窒素について その1からの続きです。
植物は、アンモニウムイオンを好んで吸収する好アンモニア性植物と、硝酸イオンを好んで吸収する好硝酸性植物に分かれますが、好硝酸性植物でも、アンモニウムイオンと硝酸イオンが両方ある場合には、アンモニウムイオンの方を優先的に取り込みます。
これは、根の表面はマイナスに、アンモニウムイオンはプラスに帯電しているので、引きつきやすいためです。
ただし、アンモニウムイオンは、植物にとって(動物にとっても)有害なので、多量に吸収すると障害が出ます。
このため、根からアンモニウムイオンの形で窒素を吸収すると、そこで速やかにアミノ酸に合成されて体の各部に運ばれます。
逆に硝酸イオンは根と同じくマイナスに帯電していて、お互いに引きつきにくいのですが、根の表面の硝酸イオン専用の輸送物質を介して取り込みます。
また、硝酸イオンは動物には有害ですが、植物にはほとんど害はありません。
従って、硝酸イオンそのままの形で蓄えられたり、輸送されたりします。
典型例としては、以下のようになります。
まず硝酸イオンが根から吸われた後、水溶液の状態で導管を通って茎まで運ばれます。
必要以上に取りすぎた硝酸イオンは、細胞の中の液胞というところで貯蔵されます。
輸送された硝酸イオンは、葉で還元されて亜硝酸イオンとなり、さらに葉緑体内で再び還元されてアンモニウムイオンとなります。
そして、光合成で生成した有機物と結びついてアミノ酸となって体の各部に運ばれたり貯蔵されたりします。
このようなアミノ酸の合成は、根でも起こります。
根では、光合成で得られた有機物が根まで送られてから窒素と結びつきます。
なお、体内でできた老廃物中の窒素分は、動物の場合は尿素となって尿として出て行きますが、植物の場合は、有機物のまま各部に送られ、再利用されます。
その3に続きます。
吉田企世子 森敏 長谷川和久 野菜の成分とその変動 学分社
塩井祐三 近藤矩朗 井上弘編 植物生理学 オーム社
山谷知行 駒嶺穆 朝倉植物生理学講座(2)代謝 朝倉書店
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