堆肥やボカシ肥をつくる時には微生物による発酵現象を利用しています。
では、発酵とは?
・・・と根本的な疑問から、今回改めて調べてみました。
そもそも、発酵という言葉は、二通りの使い方がされています。
まず、狭義の意味では、微生物が酸素を使わずにエネルギーを獲得する一連の過程です。
これに関し、発酵が微生物の仕業によるものであることを初めて発見したパスツールは、
「発酵とは酸素のない状態での生命活動の帰結である」
と表現しました。
通常我々人間は、呼吸によって酸素を取り込み、この酸素で有機物を酸化、分解させてエネルギーを得ます。
微生物の場合も概ねそうなのですが、いくつかの微生物は酸素なしでもエネルギーを得ることができます。
最も有名なのが酵母菌で、ブドウ糖を分解してアルコールと二酸化炭素にしてエネルギーを得ます。
この他にも、乳酸菌による乳酸発酵や、酪酸菌による酪酸発酵など、色々知られています。
ただし、このような発酵によるエネルギーの獲得は、酸素を取り込んで分解することによるものよりも、ごくわずかしかエネルギーを得られません。
従って、上記の酵母菌や乳酸菌等でも、酸素が十分に存在する環境下では酸素を取り込んで生活します。
話は戻って、発酵という言葉には、もう一つ別の使い方があります。
それは、微生物が有機物を分解する過程で、人間に有用な作用を及ぼすことです。
農業では、主にこちらの意味で使われます。
ちなみに、この反対が腐敗です。
どちらも同じようなものですが、人間に有益か有害か、という点が異なるだけです。
ちょっとあいまいですね。
有益な物質として、いくつかの微生物は、各種のビタミンやアミノ酸を作り出したり、ミネラル分を吸収しやすい形に変えます。
なぜこのようなことをするかというと、それらを自分が利用するためです。
人間でも、いくつかの成分は自分で合成しています。
例えば、有名なところではビタミンD(カルシウムの吸収を高める働きを持つビタミン)。
日光を浴びると、皮膚の近くで合成されます。
ただ、惜しむらくは人間が合成できる物質の種類はごくわずかで、必要な成分の多くは外部から補給しなければなりません。
これに対して、微生物は色んなものを作ることが出来ます。
従って、これを人間が利用します。
堆肥やボカシ肥では、このような有用成分がふんだんに含まれているため、植物に取り込まれて栄養分となります。
そしてこれらの栄養分は、化学肥料よりも植物にとって効率がよいとされています。
化学肥料では肥料成分は無機物で、植物に取り込まれた後、植物体内で有機物に合成される訳ですが、有機物を直接吸収すれば、合成する手間が省けるためです。
発酵の効能としては、こういった自分や他の生物の成長を助ける成分を供給するだけでなく、有害な微生物の繁殖を抑える成分も放出します。
これは、微生物の側からすれば、競争相手を抑えて自分が繁殖するためです。
有名なところでは、乳酸菌が放出する乳酸により、他の微生物が生育しにくくなることがありますし、特定の微生物にダメージを与える抗生物質などあります。
こういった複合的な効果を持つのは、発酵資材ならではの特徴で、他の資材には変えがたい魅力が感じられますね。
参考にした本
薄上 秀男 発酵肥料で健康菜園 農文協
著者の貴重な体験と深い知識に裏打ちされた貴重な情報が満載です。
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