前回は、圃場の温度環境について取り上げました。
今回はこれを受けて、高温になることにより、植物がどのような影響を受けるかについて述べたいと思います。
まず、植物には健全に成長していくための最適な温度があります。
これは、植物の種類によっても異なりますし、生育段階や植物の部位によっても異なります。
植物の種類は、野菜で言えば夏野菜のナス科やウリ科の果菜が高温に強く、冬野菜のハクサイやセロリ等が弱いです。
また、植物の部位に関しては、茎葉より根の方が高温に敏感です。
従って、夏場は特に地面を冷やすことが有効です。
さらに、単純に温度が高い、低いというだけでなく、一日の最高気温と最低気温の差も影響することが知られています。
この差がある程度大きいと、果実の品質が良くなることから夜温を下げることが有効と考えられます。
適正範囲を超えて温度が上がっていくと、植物は高温によるストレスを受けるようになります。
高温ストレスは、植物体内の水分の状態が変化することによって起こります。
ここで、植物体内の水には2つの種類があります。
一つは、植物体内を流れる自由水、もう一つは、植物を構成する有機物と結びついた形で存在する結合水です。
高温になると、自由水が減って結合水の割合が増えます。
ちなみに、低温ストレスの場合は逆に自由水の割合が増えます。
さらにある程度以上温度が高くなると、高温障害が発生します。
症状としては、生殖成長、すなわち花が出て実をつける際に異常が出るようになります。
具体的には、花粉が入っている葯が開かなくなったり、開いても花粉が飛ばなくなったり、花粉が飛んで首尾よくめしべに付着しても花粉管が伸びなかったり・・・といった色々な要因で正常な受精が行われなくなります。
最近の研究では、このような高温障害が起こる原因として、植物ホルモンであるオーキシンの量が減ることが原因とされています。
従って、オーキシンを添加してやれば、高温障害が改善することがいくつかの植物で確認されています。
植物自体は、このような高温障害をどのように防ぐか、というと、彼ら自身色々な対策を講じています。
列挙すると、
・気孔から水分をたくさん放出(蒸散)して、気化熱で冷やす
・落葉する
・葉を小さくする
・葉の向きを太陽から当たらないように傾ける
・高温障害が受けにくくなるようなタンパク質をつくる。
最後のものは、熱ショックタンパク質と呼ばれるもので、動物にも植物にも見られる現象です。
一部の農家では、栽培している野菜をわざと40℃くらいの温度に一定時間さらすことにより、このタンパク質を合成させて植物を強く育てるという方法をとっています。
(ただし、しっかり水分はとらないと枯れますので、ご注意を)
参考にした本
文字信貴 平野高司 高見晋一 堀江武 桜谷哲夫編
農学・生態学のための気象環境学 丸善
・・・前回と同じ
増田芳雄 植物生理学講義 培風館
・・・この本も難しく、読解するのに悪戦苦闘しました。
読解せずに誤解して、ウソを書いているかも知れませんがあしからず。
※もしよろしければクリックをお願いいたします。
↓
0 件のコメント:
コメントを投稿