2011年8月17日水曜日


日本の夏を代表する風物詩と言えば、よしずがありますね。

家の窓に立てかけて、日射を遮りながら、風を通します。

この原料となるのが、葦(ヨシ)です。

漢字では葦、蘆、芦、葭など、読み方もアシ、ヨシと複数あります。

昔ながらの、なじみの植物であったことが伺われます。

読み方に関しては、もともとアシという名前だったのが、「悪し」に通じるということで「良し」と呼び変えられました。

ヨシはイネ科の多年草です。

湿地で繁殖します。

昔の日本では、ヨシが至る所に群生していました。

「豊葦原瑞穂の国」(豊かにヨシの生い茂っている、瑞々しい稲穂の実る国)と言われるくらい、ヨシの生育に適した場所だったようです。

余談ながら、我が家の裏の空き地も、一時セイダカアワダチソウに覆われていましたが、最近は次第にヨシに取って代わってきています。

ヨシは非常に背が高い植物で、3m以上伸びることもあります。

このように背が高くなる秘密は、茎の構造にあります。

ヨシの茎は、中空になっていて、かつ節が沢山あります。

中空にすることにより、風が吹いた時にしなって折れるのを防ぎます。

さらに、中空にすることにより光合成で得た有機物分を節約して背を高くすることに使用できます。

また、背が高くなると自分の重みでたわんでしまいますが、節があることにより、このたわみを防ぎます。

ヨシは大きくて丈夫で軽いことから、人間にも様々に利用されてきました。

最初に述べたヨシズもそうですし、屋根材やすだれにも使われます。

また、これ以外にも面白い利用法があります。

ヨシは英語でReed(リード)と言いますが、これでピンと来る方もいるかもしれません。

木管楽器のオーボエとかファゴットとかの口を付ける部分はリードと呼びますね。

もともとヨシが原料となっています。

ギリシャ神話でも、ヨシと笛の話が出てきます。

山羊の神様パンは、シュリンクスというニンフ(女神)に恋をしますが、シュリンクスは嫌って逃げ、それでもパンは追いかけてシュリンクスを追いつめます。

水辺まで追いつめられたシュリンクスは逃げ切れないと観念してヨシに変身しますが、パンはこれを折って笛をつくった、ということです。

他に、ミダス王の話も有名です。

ロバの耳を持つミダス王は、このことを誰にも知られないようにしていましたが、理容師だけはこの秘密を知りました。

秘密をばらすな、と口止めされた理容師は、それでもどうしてもばらしたくなって、地面に穴を掘り、「王様の耳はロバの耳」とささやき、穴を覆いました。

でも、その場所からヨシが生え、これが風にそよぐ度に「王様の耳はロバの耳」という音が出た、という話です。

以上は西洋の話ですが、ヨシを使う楽器は世界中にあります。

日本でも笙(しょう)とか篳篥(ひちりき)はヨシを原料としており、よほど楽器に向いているのでしょうね。

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