初夏の頃は割合涼しかったですが、ここに来て暑さが激しくなってきました。
これからの農作業は、熱中症に気をつけながら作業しましょう。
人間にとっても暑さでつらいですが、植物にとってもこの暑さは過酷です。
そこで、今回は圃場の暑さと植物の関係について取り上げてみたいと思います。
といっても、これでは漠然として範囲が広すぎるので、今回は植物の生育する、地上から地下の数メートルの範囲の温度環境のみに絞ります。
まず最初に、当たり前のことですが、夏が暑くなるのは昼間の日射が強くなるからです。
日射によって温度が上がる過程は、二段階に分かれます。
最初に、日射が地表にあたって、そこで地表が暖められます。
次に、地表の熱が空気や地面の中を伝わっていくことにより、気温や地温が高まります。
従って、昼間は温度が一番高いのは地表で、地上高くなるほど温度は下がっていきます。
地下に関しては、5mくらいの深さになると地熱により15℃〜20℃(ここでは17℃としておきます)くらいで一定になり、地表から地下深く潜るに従って、この温度に近づいていきます。
ただし、土は暖められるのに時間がかかりますので、夜の冷気分が残っており、単純に17℃に向かって近づくとは限らず、17℃以下に下がって再び17℃に上がる、といった複雑な動きをします。
夜中は、昼間の反対になります。
地表から熱が逃げていくので、地表温度が最も低くなり、地上高くなるに従って、温度も上昇します。
地下も昼間の反対で、地中の浅いところでは17℃よりやや温度が高くなった後、さらに深くなると17℃に近づきます。
以上が、基本的な温度変化ですが、これは土壌の環境によって強められたり弱められたりします。
その中でも、大きな要因の中の一つが、水分です。
熱が与えられると水分が蒸発し、このとき蒸発熱が奪われることにより温度の上昇が抑えられます。
プールやお風呂から出ると寒く感じますが、これが蒸発熱の効果ですね。
さらに、蒸発した水分(水蒸気)が上に上昇していくので、この点からも地表の温度を下げる方向に働きます(日中)。
地下の温度変化に関しては、空気の働きも重要です。
団粒構造の発達した土壌では空気の比率が高くなり、その分土(固体)と水(液体)の比率が小さくなるので、熱が伝えられ易くなります。
すなわち、昼間は温度が上がり易く、夜は温度が下がり易くなります。
土の材質も重要です。
砂は熱を伝えやすく、土は伝えにくいです。
海水浴での砂浜の暑さは、誰しも一度は経験があるでしょう。
こういったことから、夏に植物の暑さを和らげてやる方法がいくつか考えられます。
一つは、水を撒くこと。
打ち水ですね。
ただし、日中の暑い時間帯に葉っぱに水がかかると、葉面の気孔が開いて水分の蒸発量が増え、萎れてしまうので気をつけましょう。
マルチをすることも有効です。
日光を反射するシルバーマルチをすれば、地表が日射のエネルギーを吸収できなくなるので、地温が低下することになります。
逆に透明マルチは、この効果がなく、また熱を空気中に逃がしにくくなるので温度は上昇してしまいます。
黒マルチは、よく用いられますが、これは地温を上げると書いてある本と、下げると書いてある本があり、微妙なようです。
マルチ材自体は黒いので日射のエネルギーを吸収して温度が高くなりますが、薄くてぺらぺらなので熱を蓄える量が小さく、このため評価が分かれるのでは?と思います。
参考にした本
長野敏英 大政謙次 新農業気象・環境学 朝倉書店
文字信貴 平野高司 高見晋一 堀江武 桜谷哲夫編
農学・生態学のための気象環境学 丸善
・・・どちらの本も、難しいですが興味深いです。
でも難しいです。
暑くてなかなか眠れない夜におススメです。
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