2010年6月9日水曜日

EM菌、その2

前回(EM菌、その1)からの続きです。

前回は、微生物の働きを腐敗、浄菌、発酵、合成に分類して、発酵合成型の微生物を優勢にすることにより、土壌を肥沃にすることができる、という考え方について述べました。

今回は、そのための手法について述べます。

EM技術では発酵、合成型の微生物として特に乳酸菌、酵母菌、光合成細菌を重要な微生物として選定しています。

このうち、乳酸菌、酵母菌が発酵、光合成細菌が合成を担うという位置づけです。

すなわち、乳酸菌は乳酸(強酸性)を作ることにより、他の有害微生物が増殖するのを防ぐとともに、光合成細菌の餌を供給する働き、さらには植物の栄養素であるリンや微量成分を水に溶ける形にする働き、等を期待しています。

酵母菌は、光合成細菌から生成される糖類やアミノ酸を取り入れて、植物に対する各種の生理活性物質を生成する働きを期待しています。

そして、光合成細菌は光合成により糖類、アミノ酸を供給する役目を担います。

EM技術では、これらの他にも多数の微生物を利用することを謳っていますが、ちょっとフォローしきれなかったので、それらについては別途機会があれば論じたいと思います。

何はともあれ、これらの微生物群を土壌中で増殖させなければなりませんが、単に土に投入するだけでは不十分で、やはり堆肥等の有機物を同時に入れてやることが必要のようです。

堆肥としては、通常の植物栽培では主に完熟させたものを用いますが、EMでは未熟堆肥の方が推奨されています。

通常は、有機物の分解が不十分だと有害微生物により根腐れなどの障害が出る可能性があるため完熟させます。

ですが、EMでは有機物は微生物の餌という位置づけなので、完熟だと分解がほとんど終わってしまっており、餌が十分供給できません。

そういった理由で、未熟を用います。

そして、有機物としては米ぬか、油かす、魚粉など、できるだけ多数の種類を投入します。

これにより、多数の微生物が、それぞれにあった餌を取り入れて増殖することができます。

そして、このような未熟有機物を十分投入した後、粘り強くひたすらEM菌を使用し続けると、ある時点から土壌が発酵合成型に変わるそうです。

なお、この他EM技術と直接的なつながりはありませんが、望ましい栽培形態として、元肥をなくして追肥を主体とした施肥にすることや不耕起栽培にすること、等々が推奨されています。

最後に、参考までにEM技術に対する批判意見を述べます。

まず、一般の耕地で特定の微生物群のみを増殖させることは極めて困難であるとの指摘があります。

また、実際にEM資材を分析したところ、EM技術で必須とされる微生物のうちのいくつかが存在しなかったという報告もあります。

さらに、第三者による追試ではEM菌による作物の増収効果が認められなかった等の報告もあります。

この他にも調べてみるといくつかありましたが、省略します。

私としては、種々の批判はあるにせよ、考え方は示唆に富んでおり、今回こうして勉強して色々と参考になりました。

参考にした本
比嘉照夫 微生物の農業利用と環境保全?発酵合成型の土と作物生産  農文協


太田保夫 共生農業 東京農大出版会


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