2011年3月27日日曜日

植物体内の養分と水分の流れ

前に根の話として、根と茎の違いや構造上の特徴について述べました。

根の中心には導管、導管の周りには師管が通っていて、導管は水を、師管は栄養分を伝える働きがある、というような内容でした。

今回はこれを受けて、根から吸収した水分や肥料成分の植物体内での流れに焦点をあててみたいと思います。

肥料成分は、イオンとして水に溶けた形で存在しており、これらの成分は水と一緒に移動します。

そして、植物が水分を吸収するしくみは二つあります。

一つは、前回も述べた浸透圧です。

何度も繰り返して恐縮ですが、植物体内は養分濃度が高いので、これが薄まるように水分が体外から浸入してきます。

もう一つは、蒸散による負圧の発生です。

植物は、動物の血管のように、ポンプ(心臓)を使って液を器官に送り込むようなしくみにはなっていません。

単純化してしまえば、根から茎を経て葉に至る管がつながっていて、そこに水が詰まっているだけです。

そして、端っこの根ともう一方の葉っぱは、外界に対して開かれています。

葉っぱの側には気孔があって、温度が高くなるとこの気孔が開き、中から水蒸気が出て行きます。

これを蒸散と言います。

蒸散で、管の上端の水がなくなってしまうと、そこに水が満たされるような力(負圧)が発生して水が吸い上げられます。

この圧力はとても強く、水を100mくらいの高さまで上げることができるくらいと言われています。

ちなみに、もっとも大きな木は高さが100mくらいですが、これは、この水を押し上げる圧力の限界から、これ以上高くなれないためだそうです。

このように、水は導管内の負圧で運ばれるのに対して、光合成で生成した養分の方は師管の正圧で運ばれます。

光合成で得られた糖分は、葉の近くに通っている師管の細胞内に流入していきます。

そうすると、例の浸透圧によって師管細胞に水分が吸収されてその圧力で膨張します。

師管の周りの細胞壁はその膨張圧で押し付けられるので、その反発力で師管は押し戻されようとする力が働き、これにより中の液が流れていきます。

ところで、 よく「朝採り野菜はおいしい」とか、「いや、夕採りの方がおいしい」とか言いますが、上記のような液の流れから、どちらが妥当であるか考察してみます(当たっているかどうかはわかりませんが)。

最初は、水分について。

まず、日中は温度が高くなるので蒸散で水分は抜けていきます。

さらに、光合成によっても水が消費されます。

根からの水分供給や呼吸による水分の発生もありますが、これよりも水分が消費される方が多くなりがちです。

結果として、植物体内の水分濃度は少なくなります。

夜になると、蒸散量は減ってくるので水分濃度は高まります。

とすると、水分濃度は夜明け頃が最も高くなるので、朝採り野菜は水気が多く、歯ごたえのよい状態になっていると言えそうです。

次に糖分濃度(甘さ)について。

日中は、光合成により糖分が生成されます。

この糖分は師管を通って各部に流れていきますが、流れる早さより生成する早さの方が早いため、葉に糖分が蓄積していきます。

日が暮れて光合成が出来なくなると、葉の糖分は師管を通って根まで降りてきます(根だけではないですが、単純化のため、そうしておきます)。

根は肥料成分を吸収するときには、大きなエネルギーを必要とするので、そのためにこの糖分が使われます。

とすると糖分濃度は、日暮れ前が最も高くなるので、夕採り野菜は甘い、と言えそうです。

最後に、硝酸濃度(食味?)について。

硝酸濃度が高い野菜は食味がよくない、とか言われますが、具体的にどうよくないのか知らないので、曖昧に食味とだけしておきます。

また、体にも良くないとされており、硝酸濃度は低い方がよい野菜と言えるようです。

日中は光合成が起こりますが、この生成物質と硝酸からアミノ酸が合成されていきますので、硝酸濃度は低下していきます。

夜になると、根は糖分を使って硝酸イオンを吸収していきますので、硝酸濃度は高まります。

夜が明けると再び葉っぱから蒸散が始まり、硝酸イオンが導管を通って、この形のまま葉まで運ばれます。

とすると硝酸濃度は、朝が最も高くなるので、朝採り野菜は食味が悪いと言えそうです。

ただし、これは根菜や葉菜の場合で、果菜では硝酸イオンは流れていかないので、問題はなさそうです。

ということで、果菜類では朝採りの歯ごたえを、葉菜では夕採りの甘さを指向つのがよいと思うのですが、如何でしょう?

参考にした本

高橋英一 「根」物語 地下からのメッセージ 研成社


原襄  植物形態学  朝倉書店


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