ここの所、堆肥とか有機質肥料を礼賛する話が続きました。
でも、化学肥料が駄目だというわけでは無論ありません。
何と言っても、有機肥料より濃度が高い分、投入量が少なくていいので楽です。
単肥であれば、値段もすごく安いし効きも早いです。
有機肥料は買うのは(単位成分量あたりでは)高めですし、自作するのもなかなか大変です。
収穫量に関しても、有機肥料と化学肥料で差がないというデータがあります。
イギリスでは、何と1850年頃からずっと化学肥料だけを使った圃場と有機肥料だけ使った圃場で、コムギのを育て続ける実験をしているそうです。
結果は、今までのところずっと同じような収穫量で推移しているそうです。
このくらい長期間安全確認をしていれば、信用する気にもなります。
もっとも、食味の方は知りませんが。
という訳で、今回は化学肥料に関する話題ということで、使用に際しての一般的な注意点について述べていきます。
まず化学肥料のもっとも大きな特徴は、最初にも述べた通り、肥料成分の濃度が高いことです。
例として代表的な窒素肥料について述べますと、油かす中の窒素分は約5%なのに対して、尿素中の窒素分は約43%にもなります。
これは利点にもなりますが、逆に多量に投入したときに、濃度障害が生じやすいという欠点にもなります。
また、追肥等で少量施す場合でも植物の近くにかかると障害が起こる危険性が増えます。
かつ、大量に施して吸収しきれなかった分は、雨水等で流されたり、土の中で分解されて温室効果ガスを発生したりして環境破壊の元となります。
また、単一の肥料成分を含むものを施す場合は、他の土壌養分とのバランスを良く考えた方がよいようです。
肥料成分同士で、吸収を抑える作用や進める作用があるためです。
例えば、土壌中のアンモニア濃度が高くなるとカルシウムが吸着しにくくなります。
あるいは、カリウム、カルシウム、マグネシウムのどれかが高くなりすぎると、それ以外の成分が吸収しにくくなります。
逆に、別の成分の吸収を助ける例としてはマグネシウム濃度が高くなると、リン酸や窒素が吸収しやすくなるということがあります。
と、色んな成分濃度により、別の成分の吸収量が変わるのでとてもややこしいですね。
もっとも、土壌の成分バランスについては、土壌分析して必要なものだけを投入できるので、色んな成分を含む有機肥料よりもむしろ扱いやすそうです。
あと、バランスを取ろうとして、複数の肥料を混ぜると化学反応を起こしてしまうことがあります。
例えば、硫安と消石灰を混ぜるとアンモニアガスが発生して、根に障害が生じる可能性があります。
この他、いくつかの肥料では、土壌が酸性化しやすいということも挙げられます。
例えば硫安を施すと、成分のアンモニアは窒素分として吸収されますが、残りの硫酸は土を酸性化してしまいます。
以前にも書きましたが、土が酸性になってpHが低くなりすぎると保肥力が低下したり、植物に有害なアルミニウムイオンが溶出したりします。
最後に、化学肥料は肥効が早いですが、これがかえって植物に悪影響を及ぼす可能性もあります。
素早く吸収されて植物が急激に生育し、徒長してしまうためです。
と、欠点を過度にあげつらった嫌いはありますが、これらは利点の裏返しであったり改善品が存在していたりします。
結局のところ、有機肥料、化学肥料に限らず、各資材の性質をよく理解して使う、ということに尽きるように思われます。
参考にした本
藤原俊六郎 だれでもできる肥料の上手な効かせ方 農文協
武田健 新しい土壌診断と施肥設計 農文協
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