2012年2月1日水曜日

ボカシ肥の材料について(2)

その1 からの続きです。

だいぶ間が空いたので、まずは前回のおさらいから。

ボカシ肥に入れる材料としては、 有機物として油かす、米ヌカ、魚粉、鶏糞等々を主成分に用い、さらに土やバーミキュライト、必要に応じて化成肥料や炭、草木灰、微生物資材を用います。

今回は、これらの材料を用いる意味やポイントを中心に述べていきたいと思います。

まずは、主成分の有機分について。

選定の目安は、1)値段、2)肥料成分量、3)肥効の早さの3つです。

といってもあまり気にしないで、入手しやすいものを用いればよいと思います。

例えば、私の住む地域では米ぬかが簡単に手に入りますので、これを多用しています。

ごくごく簡単に原料の特徴を述べると、肉魚系の肥料は高価でチッソ分が多く肥効が早い、植物系の肥料は安価で肥効が遅い場合が多いです。

例外も多いですが。

次に土やバーミキュライトについて。

これは、主剤の有機物と同じくらい沢山入れます。

土を入れると、その分肥料成分が薄まって、肥効も弱くなってしまうように思えますが、実際にはそうでもなさそうです。

その理由の一つは、肥料成分(主にチッソ)の脱離が防がれるためです。

ボカシ肥作りの際に、発酵が進むにつれて異臭がすることがありますが、これはチッソ分がアンモニア(チッソ化合物)となって揮発することによる場合が多いです。

こうなると、肥料中のチッソ分も低下してしまいます。

しかし、ここで土を混ぜ込んでおくと、アンモニアが土の表面に吸着することにより、チッソの脱離が防がれます。

また、副次的効果として悪臭も抑えられます。

ちなみに、今手元に色んな材料のボカシ肥中の成分表があるのですが、土ありなしでの主な肥料成分の違いは、以下のようになっています。

チッソ・・・土入り:2〜5%
土なし:0.5〜8%

リン酸・・・土入り:5〜6%
土なし:0.7〜6%

カリ・・・土入り:2〜6%
土なし:0.3〜5%

C/N比・・・土入り:5〜7
土なし:5〜60%

土を入れても、必ずしも肥料分は減っていません。

むしろ、土を入れない方が肥料成分が少ないものもあり、ばらつきが大きくなっています。

ただ、チッソとカリはまだしも、リン酸はなぜ土を入れても成分が薄まらないのか、不思議です。

チッソはアンモニアガスやカリは水溶液として脱離するかも知れませんが、リン酸はそのようなことはなさそうです。

この理由は、土を入れることにより有機物の分解が早まって、分母となる成分が減ったためと思われます。

実際に、土なしでのC/N比は著しく高いものがあり、有機物の分解が不十分な場合があると分かります。

このことから、土は発酵(有機物の分解)を安定化させる効果もありそうです。

最後に微生物素材について。

これは必ずしも必要ではありませんが、有用微生物を増やすために、積極的に投入することがよく行われています。

この時に用いられる微生物は、大きく分けると好気性微生物と嫌気性微生物、あるいは別の分け方で市販の菌と土着菌、といった分類ができます。

好気性の菌を用いる利点は、発酵が進みやすく比較的短時間でボカシ肥ができることです。

これに対して嫌気性の菌を用いる場合には、肥料を施して覆土したときに、土の中の空気が少なくなった状態でも繁殖できるという利点があります。

どちらを選ぶか、あるいは両方使うかは人それぞれで特にどちらがいいとは言えません。

なお、嫌気性微生物というのは二種類あります。

一つは空気がなくなると繁殖できなくなる絶対嫌気性、もう一つは酸素が十分存在する条件下では好気的に繁殖し、酸素が不十分になると嫌気的に繁殖する条件嫌気性です。

ボカシ肥に用いるのは、条件嫌気性微生物が多いです。

ただし、このような条件的嫌気性の微生物を用いた場合でも、土に投入したあと生き残れるかどうかは微妙で、既存の土壌微生物に取って代わられる場合も多いです。

そのため、できるだけ土着の微生物を培養してやれば、気候他の環境条件が似通っているので、土壌に施しても生き残りやすいと考えられます。

そういうことで、市販の微生物資材よりも土着の微生物を培養することも多くなされています。

土着の微生物を採取するのは、主に冬に行われます。

暖かいと、雑菌が繁殖しやすくなるためです。

近くの山林の枯れ葉の下をめくって、白い綿のような菌のかたまり(通称はんぺん)をとってきて、これを米ヌカ等で一次培養して用いることが多いようです。

参考にした本

農文協編  ボカシ肥の作り方使い方  農文協

小竹幸子  無農薬でバラ庭を  築地書館

農業技術体系 追録第12号・2001年 第7−1巻
有機肥料の組成と土壌微生物

農業技術体系 追録第7号・1996年 第7巻
各種発酵肥料

以上、前回と同じ

薄上 秀男  発酵肥料の作り方・使い方  農文協

筆者は、長年農業試験所でボカシ肥作りに関わってきており、広く深い情報が満載です。

失敗例とその原因についても紹介されており、とても分かりやすくためになります。

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