2013年11月12日火曜日

土壌への有機物投入


 11月も半ばになりました。

 露地栽培では、ナスやウリ等の果菜類も終わり。

 跡地に秋冬野菜を植えるところもあれば、休ませるところもあるでしょう。

 休ませる場合、植物が植えていない状態でも土作りのために米ぬかとか堆肥とか有機物を施用することがよく行われます。 

 今回は、このような有機物施用の役割について考えてみましょう。



 役割として、まずは野菜栽培時に消費した土壌成分を補給する働きがあります。

 消費された主要成分は窒素、リン酸、カリ、あとカルシウム、マグネシウムなどですが、これらは化学肥料としても容易に投入できます。

 これら以外に、植物の必須微量成分としてマンガン、亜鉛、ホウ素、硫黄、鉄、銅、モリブデンなども必要とされます。

 これらは植物にとってはごく微量しか必要でないので、化学肥料で意図的に投入されることはあまりありません。

 過剰に投入しすぎてもかえって害になりますし、成分同士が拮抗作用を持つこともあります。

 すなわち、ある成分が過剰になると他の成分が吸収されにくくなったりします。

 そこで、有機物を投入するとこれらの元素が効果的に導入できます。

 有機物は、元々は植物であるか、それを食べた動物の糞尿由来ですので、植物に必要な微量元素の成分は、適量含まれているためです。



 また、有機物そのものは土壌の腐植を増やすためにも重要です。

 圃場では、何も栽培しなくても、微生物や小動物が土壌中の有機物を消費することにより、土が痩せていきます。

 自然な状態であれば、長年の間に色んな植物が生い茂っては枯れて、それらが微生物等の消費以上の腐植となり、土壌に蓄積されます。

 しかし、圃場では人間がそこで育った植物を持ち出すので、どうしても腐植が減っていきます。

 夏野菜で育てた果菜など、収穫後の残渣を鋤き込めばまだしもですが、残渣を外で焼却したり葉菜などを育てて収穫すると、消耗も大きくなります。

 そこで、このような土壌中の腐植の減少を防ぐために有機物を投入するわけです。

 圃場の状況にもよりますが、反当たり概ね1トンもの堆肥を毎年投入する必要がある、ともいわれています。
(ただし、資料によって数字が大きく違いますので、鵜呑みにしない方がよいかもしれません)



 このように大量に有機物を施用することにより、それを食べる微生物が増え、その微生物の作用により土の団粒構造が発達します。

 いわゆる物理性、生物性の改善です。

 さらに、腐食が増えることによる養分の保持力も向上することとなります。

 ついでに言えば、農薬を撒いた時に腐植の少ない土では雨等で河川等に流失しやすくなりますが、腐植が多いと農薬を吸着して流出を防ぐ効果もあります。

 また、農薬が腐植に吸着すると微生物による分解の影響を受けにくくなり、無害化する速度が遅くなるとも言われています。



 注意すべきは、圃場によっては窒素が必要以上に増える可能性があります。

 また、どうしても投入量が多いので体力的にはきつい仕事となります。

 肥料成分をきちんと考慮して適切な資材を選んだり、緑肥を利用する、などの工夫をしましょう。

参考にした本

岩田進午  土は生命の源  創森社

佐久間敏雄 梅田安治  土の自然史  北海道大学図書刊行会

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