2013年12月3日火曜日

土壌水分


 季節はもう冬です。

 今年の秋は、雨が多かったですね。

 もともとは、私の住む地域はあまり雨が降らないのですが、ここ何年か、随分よく降るようになったような気がします。

 おかげで土がなかなか乾きません。

 私の畑は重粘土質で、一回まとまった雨が降ると数日はぬかるみます。



 ちなみに、日本の降雨量は世界平均の約2倍です。

 土壌表面から水分が蒸発する量よりも、降水量の方が多いため、余剰の水分は河川や地下水に流れ込んでいきます。

 このくらい水分が多いと、植物にとっては根腐れとなったり、上手く結実できなくなったりする弊害も出やすくなります。

 また、降雨が多すぎて河川に流れ込むことにより、土のミネラル分が水に溶けて減っていきやすくなります。

 一方で、砂漠などの乾燥地帯では、逆に蒸発量の方が降雨量よりも多くなります。

 こちらは水分不足で植物が枯れやすくなります。

 また、ミネラル分は水分の蒸発とともに土の表面に濃縮していきます。

 いわゆる塩類集積と呼ばれる現象です。

 日本でもハウス栽培では、塩類集積が起こりやすくなります。

 このように、土壌の水分は植物にとってそれ自体だけでなく、養分の供給にとっても重要です。

 そこで今回は、土壌水分について考えていきましょう。



 まず、土壌水分の保持には、土の粒子の大きさが強く関与します。

 土の粒子が小さいと、粒子の隙間に水分が入り、毛管凝集によりなかなか抜けなくなります。

 逆に大きいと、粒子の隙間に水が入っても、すぐに重力で抜けてしまいます。

 よく団粒構造がよい、といわれるのは、小さな粒子が集まって、見掛け上大きな粒子になっているため、水分が保持されたまま、水はけもよくなるためです。


 ただし、あまりにも小さい粒子だったり、粒子の表面に水分が強く吸着した場合は、植物にはその水は利用できなくなります。

 もし、何日も晴れの日が続いて、土がカラカラに乾いて植物が枯れてしまっているような場合でも、実は土の粒子の周りには水分が吸着していますが、利用できないだけです。

 従って植物にとっての土壌水分の利用のしやすさを、数値化して把握する必要があります。

 通常、これはpF値という値で示されます。

 pF値とは、水が土に吸着している強さを水柱の高さ(センチメートル)の常用対数で表したものです。

 たとえば、pF値が0であれば、単位面積あたり1センチメートルの高さをもつ水の柱が地面にかかるのと同じ強さの力で水分が土の粒子にくっついていることに相当します。

 これを圧力で言えば0.001気圧、1ヘクトパスカルに相当します。

 この定義に従えば、植物が利用できるpF値は3(1気圧くらい)までで、利用できずに萎れはじめるのは3.8(6気圧くらい)、全く
利用できないのは4.2以上(15気圧くらい)となります。

 このように萎れはじめる水分量を初期萎れ点、利用できないところを永久しおれ点と言います。



 ところで、これを聞いた時に疑問に思ったのが木の高さの問題です。

 世界で一番高い木は100メートル以上あります。

 つまり、木はこの高さまで水を引き揚げているわけですが、この時の引き上げる圧力は、30気圧を超えることが実測されています。

 とすると、永久しおれ点以下なのでこの程度の水分量でも利用できるのではないかと思うのですが、どうなんでしょう?

 世の中、勉強するたびに分からないことがいくらでも出てくるので楽しいですね。


 話はそれましたが、水は植物栽培の中でも死活的に重要です。

 今までの農業は単位面積あたり、あるいは単位労働時間あたりの収穫量を増やすことに重点が置かれてきました。

 しかし、近年の世界の砂漠化の進行により、これからは単位水量あたりの収穫量を最大化することが必要となるとも予想されています。

 日本では、豊富な降雨量のため、水不足になることはない、とも思われがちですが、降水量の変動が激しくなることが予想されています。

 すなわち、年によって極端に多雨となったり小雨となったり、といった傾向です。

 あるいは、一年のなかでも夏場に激しい豪雨が頻発する、といったことは現在でも起こってきていますね。

 こうした気象から作物を守るためにも、身近な水について、しっかり理解して管理して行きましょう。


参考にした本

駒村正治 中村好男 桝田信彌 土と水と植物の環境
 理工図書

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