前回は「売るものづくりセミナー」という講演会の内容をご紹介しました。
(イマイチ受けが良くありませんでしたが)
簡単に要約すると、ブランドを作ることで、生産者、消費者双方にメリットが生じる、という話です。
生産者にとっては顧客との信頼関係を築くことにより、他の商品と差別化することができ、消費者にとっては、本物の価値が容易に見分けることができます。
ただし、前回の話ではブランドのメリットに重点が置かれていて、ブランドの作り方にはあまり触れられませんでしたので、今回はその辺りについて述べていきたいと思います。
また、前回はモノづくり一般についての話でしたが、今回は特に農産物に着目して述べていきます。
(加工品は今回の話からは外します)
それで、まず何はともあれブランドを作る上で必要なのはポジショニング、自分の作る農産物の立ち位置です。
この、ポジショニングを分析する時には、よく二次元マップをつくります。
例えば、横軸に市場のシェア、縦軸に値段をとって、「私の売っているナスは、シェアが低いが値段は高いからグラフの左上の方だな」とか分析します。
そうすると、その分析の結果、「従って富裕層相手にプレミア品的な位置付けでとして売り出そう」とかいう方針が決まる訳です。
それで、ブランド化のためのポジショニングで軸とすべきは、やはり品質ですね。
高品質であることは欠かせない条件です。
といっても、品質にも色々なものがあります。
自分の農産品にあった特性を知っておく必要があります。
農産物にとって必要な品質を思いつくままにあげると、1)安全性、2)健康、3)おいしさ、4)形状、5)農法 あたりが考えられます。
各々について述べますと、1)の安全性は、作る側にとってはこだわりは大きいと思います(私もそうです)が、消費者の目線で見ると、疑問符がつきます。
もちろん、安全性の損なわれた農産物は論外ですが、安全であることは、消費者にとっては当たり前で、これを売り文句にしても訴求力がありません。
しかし、安全性をさらに一歩進めて、健康を増進するとアピールすれば、売り文句となります。
これが、2)の健康ですね。
「アレルギーやアトピーの人にも安心して食べられる」とか「生活習慣病を予防する効果のある○○という成分が含まれる」とかよく見かけますね。
(表現の仕方については法律上の問題があり、注意が必要ですが)
3)のおいしさも、よく使われる指標です。
おいしさの中でも、糖度や旨みだけでなく、歯ざわりや舌ざわり、食感など様々な視点で考えていきます。
4)の形状については、例えば大きさが小さめであれば、老人にとって食べやすく、アピール可能となります。
逆にししとうのような小さな野菜では、大きくすることにより調理が容易となって、主婦に喜ばれます。
あるいは見た目の面白さを追求して四角いスイカとか、断面が星型のきゅうりなど作られたりしています。
最後に5)の農法は、有機無農薬栽培とか、自然栽培とかが魅力ある農産物としての地位を獲得していますね。
直接的に、消費者の利益をもたらす訳ではありませんが、これらを謳うことにより、健康とかおいしさ、環境面での配慮、などのイメージを抱かせます。
以上、これらの中から自分の農産物でアピールしたい項目について着目し、ポジショニングを定めたのちに、それを他の生産地にない独自の売りに仕立て上げます。
ここで、農産物の独自の問題が生じます。
普通のブランド品は品質や製造量が安定していることが必須ですが、農産物はその時々の気象条件や環境条件によってこれらが大きく変わってきます。
果樹とかハウス栽培であればまだしもですが、野菜など栽培時期が短くて露地ものであれば特にその傾向が顕著となります。
(従って露地野菜のブランドは概して他の農産物より少ないです。)
こうした事情で、農産物そのものというより、作っている地域や人をブランド化することが多くなります。
「ごっくん馬路村」とか、「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏などはその良い例です。
また、もう一つ農産物の特異性として、品質の良さが分かりにくい点も挙げられます。
上に述べた5種類品質のうち、わかりやすいものは形状と、あと強いて言えばおいしさくらいなものです。
健康特性や安全性、栽培技術などはほとんど販売する側の言うがままです。
従って、これらの品質の優位性を謳うだけでは、消費者の共感は得られにくいのが現状です。
このことからストーリーが重要となります。
上述の馬路村や、奇跡のリンゴ、あるいは葉っぱを売り出した徳島の上勝町など、いずれも思わず聞き入ってしまうような興味深いストーリーがあって、引きつけられます。
これらは、本やテレビ、雑誌などいろんなメディアで情報発信されていますね。
この、情報発信も必須です。
広告を出したり、テレビ等のマスメディアにプレスリリースを送ったり、インターネットのホームページをつくったりと、手を変え品をかえて消費者の目に留まるようにします。
「お金がないから広告費がかけられない」という考えは捨てたほうが良いようです。
このように、地域で売り出したり、大量の情報発信をするためには少数の農家の力だけでは難しく、そのため、多くの場合は官民一体となった取り組みがなされています。
あとは、テストマーケティングとか、デザインとか色々ありますが、このあたりは農産物の特異性とはあまり関係がなさそうなので省略します。
こうして見てみると、農産物のブランド化といっても一朝一夕にはいかないな、と平凡な感想を持ってしまいました。
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