その1からの続きです。 (その1→アルミニウムと作物生産 その1
アルミイオンは水に溶けた形で、植物が水を吸収する時に取り込まれます。
まず、アルミイオンとリン酸が結合して、リン酸が利用できなくなります。
また、細胞核が結合して、正常な細胞分裂が起こりにくくなります。
他にも、細胞膜の脂質が酸化されてしまったり、根の表皮がに亀裂が生じたり脱落したりします。
細胞膜が破れて、中からカリウムイオン等が漏れ出る、等の障害も出ます。
このようなアルミイオンの害ですが、植物によっては受けにくいものもあります。
コムギ、アジサイ、ソバ、チャ、トウモロコシ等です。
これらの植物は根からカルボン酸等の有機物を出して、アルミをと反応させ、キレート化という形にすることにより無害化できます。
さらに、チャなどでは、アルミを積極的に吸収することもあります。
チャは、リン酸に弱く、過剰にあると障害を受けますが、アルミを吸収することにより、この害を抑えます。
あと、植物そのものではないですが、アルミが土壌中の腐植を増やす働きもあります。
通常は、植物の残さは微生物が分解してしまいますが、アルミイオンがあると、植物の残さと結合して、微生物が分解しにくい形となります。
ちなみに、土壌中の腐植を増やすには、イネ科の植物を育てればよいようです。
イネ科の植物は、ケイ酸を好んで吸収します。
土壌中の鉱物を溶解して、ケイ酸を吸収することもできます。
土壌中の鉱物は言うと、主にアルミとケイ酸から成り立っているので、ケイ酸が吸収されることにより、アルミが残ります。
このアルミと、イネ科の植物の残さが結合して腐植となります。
最後に人体への影響について少し。
有名なのは、アルミを接種すると、アルツハイマー病になりやすい、との話がありますね。
が、これは必ずしも証明されている訳でなく、現在ではむしろ否定的であるようです。
アルミ自体は、摂取してもほとんどがそのまま体外に排出されるだけで、どのような影響があるかはよくわかっていないそうです。
以上、アルミについて調べてみました。
アルミは身近な成分なのになぜ植物に害が生じるのか、不思議に思っていましたが、巡り巡って植物の生育にも有用な働きをしているようです。
自然の中には、一見有害に見えるものであっても、実は多かれ少なかれ何らかの役に立っているのかもしれませんね。
参考にした本
阿部教治 松本真悟 作物はなぜ有機物・難溶解成分を吸収できるのか 農文協
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やや難しめの本で、何度も読みなおさなければ理解出来ませんでした。
今回のアルミの話以外にも、植物の養分吸収能力に対する色んな興味深い話が載っています。
平澤栄次 植物の栄養30講 朝倉書店
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平易に書かれていて図も多く、分かりやすいです。
植物の栄養に対する、素朴な疑問に答えてくれます。
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