2012年11月9日金曜日

アルミニウムと作物生産 その2

その1からの続きです。 (その1→アルミニウムと作物生産 その1

 アルミイオンは水に溶けた形で、植物が水を吸収する時に取り込まれます。

 まず、アルミイオンとリン酸が結合して、リン酸が利用できなくなります。

 また、細胞核が結合して、正常な細胞分裂が起こりにくくなります。

 他にも、細胞膜の脂質が酸化されてしまったり、根の表皮がに亀裂が生じたり脱落したりします。

 細胞膜が破れて、中からカリウムイオン等が漏れ出る、等の障害も出ます。

 このようなアルミイオンの害ですが、植物によっては受けにくいものもあります。

 コムギ、アジサイ、ソバ、チャ、トウモロコシ等です。

 これらの植物は根からカルボン酸等の有機物を出して、アルミをと反応させ、キレート化という形にすることにより無害化できます。

 さらに、チャなどでは、アルミを積極的に吸収することもあります。

 チャは、リン酸に弱く、過剰にあると障害を受けますが、アルミを吸収することにより、この害を抑えます。

 あと、植物そのものではないですが、アルミが土壌中の腐植を増やす働きもあります。

 通常は、植物の残さは微生物が分解してしまいますが、アルミイオンがあると、植物の残さと結合して、微生物が分解しにくい形となります。

 ちなみに、土壌中の腐植を増やすには、イネ科の植物を育てればよいようです。

 イネ科の植物は、ケイ酸を好んで吸収します。

 土壌中の鉱物を溶解して、ケイ酸を吸収することもできます。

 土壌中の鉱物は言うと、主にアルミとケイ酸から成り立っているので、ケイ酸が吸収されることにより、アルミが残ります。

 このアルミと、イネ科の植物の残さが結合して腐植となります。

 最後に人体への影響について少し。

 有名なのは、アルミを接種すると、アルツハイマー病になりやすい、との話がありますね。

 が、これは必ずしも証明されている訳でなく、現在ではむしろ否定的であるようです。

 アルミ自体は、摂取してもほとんどがそのまま体外に排出されるだけで、どのような影響があるかはよくわかっていないそうです。

 以上、アルミについて調べてみました。

 アルミは身近な成分なのになぜ植物に害が生じるのか、不思議に思っていましたが、巡り巡って植物の生育にも有用な働きをしているようです。

 自然の中には、一見有害に見えるものであっても、実は多かれ少なかれ何らかの役に立っているのかもしれませんね。

参考にした本

阿部教治 松本真悟  作物はなぜ有機物・難溶解成分を吸収できるのか  農文協



 やや難しめの本で、何度も読みなおさなければ理解出来ませんでした。

 今回のアルミの話以外にも、植物の養分吸収能力に対する色んな興味深い話が載っています。

平澤栄次  植物の栄養30講  朝倉書店



 平易に書かれていて図も多く、分かりやすいです。

 植物の栄養に対する、素朴な疑問に答えてくれます。

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