2012年11月1日木曜日

アルミニウムと作物生産 その1

 前回は、やや多量に必要な肥料成分の話でした。

今回は逆に、植物にとって有害な物質としてアルミについて取り上げてみたいと思います。

アルミは、化学記号でAlと表記されます。

アルミ箔やアルミサッシなど、身近にもよく使われていますね。

土壌にも、ケイ素や酸素とともに多量に含まれています。

ただし、土壌中では金属のアルミとして存在していることは稀で、多くはケイ素や酸素とイオンとして結合しています。

ここで、イオンになっていない金属のアルミ自体は特に有害ではありません。

例えば盆栽などではアルミの針金で枝を矯正することもありますが、針金本体は金属ですので問題ありません。

また、表面は空気中の酸素と結びついて酸化アルミニウムとなっており、アルミイオンが溶け出てくることはまずありませんので、やはり問題ありません。

土壌中ではアルミはイオンAl3+となっている場合も多いですが、酸素イオン等と強く結びつけられており、普通は植物に害を与えません。

ところが、土壌が酸性になると様相が異なってきます。

酸性かアルカリ性かはpHで評価しますが、だいたいの目安を書くと次のようになります。

pHが概ね10以上(強いアルカリ性)
・・・アルミはAl0−イオンとして存在(無害)

pHが概ね7〜9(弱いアルカリ性)
・・・水酸化アルミAl(OH)3として存在(無害)

pHが概ね5〜7(弱い酸性)
・・・水酸化物と結合したイオン状[Al(OH)2.5]0.5+(無害)

pHが概ね4以下(強い酸性)
・・・アルミはAl3+イオンとなって水の中に溶け出る(有害)

具体的な植物に対する害についてですが、これは酸性による害とアルミイオンそのものによる害と分けて考えなければなりません。

まず酸性による害ですが、酸性というのは、平たくいえば水の中に水素イオンが沢山存在する状態です。

これによる害は、植物体内に水素イオンが沢山入り込んで細胞質が酸性化することによります。

そうなると、酵素の働きが低下します。

酵素は中性域で最も働きやすいためです。

ただし、酸性になることによる害については、植物体内のリン酸や重炭酸塩などが体内の酸性化を防いだりするなど、害を避けるための様々な応答反応が起こります。

従って、ある程度までは障害を受けることなく、耐えられます。

従って、土壌が酸性になることの害は、主にアルミイオンによるものと考えられています。

その2に続きます。

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