2013年1月26日土曜日

TPPについて

 今回は、TPPについてです。

 TPPというと、人によって賛成/反対、大きく意見が分かれていますね。

 経済の専門家の間でも、言う事が180度違っていたりして、一般人は何を信じればいいんだ?という気になります。

 農業関係では、コメがもっとも問題とされていますが、それも人によってコロコロ変わります。

 農水省ではTPPによりコメの生産量が1割にまで減少する、という試算がなされている一方、多くの経済評論家からはその試算はおかしい、との反対意見が出ています。

 こうして見ると、いったい経済学って何?と思えてきます。

 そもそも、今ひとつ内容が理解できていませんので、専門家の意見が違うと混乱してしまうのです。

 そこで、今回はTPPの初歩の初歩について、自由貿易のメリットとそれによる農業、とくに米作農家のデメリット、という観点に絞って調べてみました。

 まず、自由貿易のメリットですが、これは比較優位という経済概念で説明できます。

 話を単純化して、日米間でコメと自動車の輸出入をするとします。

 それぞれの値段を単純化して、

 日本・・・コメ1トン1万ドル、自動車1台1万ドル
 米国・・・コメ1トン5千ドル、自動車1台2万ドルとします。

 ここで、日本が自動車を1台輸出したとすると、1万ドル儲かりますから、これで米国からコメが2トン買えます。

 すると、国内でまかなうのにくらべ、差引きコメ1トン1万ドル分得したことになります。

 米国側は、コメ2トン1万ドル分売って得た利益で2万ドル分の自動車を手に入れたので、やはり1万ドル分得したことになります。

 新たにモノを作った訳でもなんでもなく、モノを左右に動かしただけでどちらも得をするという、なんだかだまされたような魔法のような変な話ですね。

 まあ、そういう訳で国家レベルでいえば、モノの価格差が大きければ大きいほど儲かる話になるわけです。

 なお、この話では以下に挙げる4つの問題があります。

 1)輸送コストを考慮にいれていない事

 2)為替レートの変動を考慮に入れていない事

 3)二国間の二品目だけの比較で、多国間または多品目、あるいは生産する原材料の輸入を考慮に入れていない事

 4)二国間で生産されるモノの品質の差を考慮に入れていない事

 これらについては、今回は無視しますが、実際は無視できない程度に大きく、多くのTPP反対派の意見はこれらを踏まえたものです。

 いずれにせよ、国家レベルでは儲かる話にはなるものの、個々の業種では浮き沈みが出てきます。

 つまり、上記のようにコメが大量に海外から入ると、当然の帰結として、値崩れが起こり、その結果米作農家の収入が減ってしまう訳です。

 それでは、実際にどの程度減るのでしょうか。

 まず。米の生産量からみてみますと、日本の1年あたりの米の生産量はだいたい900万トンです。

 その用途の内訳は、

 加工米(餅やせんべいなどの原料):100万トン弱

 外食、中食(コンビニ弁当など):300万トン

 スーパー等で消費者が買うお米:300万トン強

 縁故米(農家が親戚や知人に無料であげる):200万トン弱

 縁故米は、TPPで減る理由はありません(農家の高齢化では減るかもしれませんが)ので、これはそんなに変わらないと予想されます。

 また、スーパー等で買うお米も、外国産はあまり入らないことが予想されます。

 これは、スーパーで野菜や果物の産地を見てみれば、わかります。

 野菜は関税率3%前後、果物は5〜10%で概ね輸入が自由化されていますが、国内で生産できる品目については、ほとんど国内産ばかり売られていますね。

 それだけ、消費者の国産指向が根強い訳です。

 残りの加工米、外食、中食はある程度の量、外国産に切り替わる可能性は高いと思われます。

 しかし、やはり消費者の国産品指向があるので、全量切り替わり、ということはないでしょう。

 以上の点から、どんなに少なくても、半分以上は国産のお米が生き残るのではないでしょうか。

 次に具体的にどんな農家が減るでしょうか、農家の戸数から見てみましょう。

 現在では、米作農家の数はだいたい200万戸くらいです。

 うち約140万戸が販売農家、残りが売らずに自給している農家です。

 自給している農家については、TPPで減る理由はないですね。

 販売農家を規模別に見てみると、70%以上の農家が栽培面積1ha以下の農家で、農業収入は赤字になっています。

 主に、農業外収入で生活されています。

 もともと赤字の農家が、TPPで収入が減った時にさらに赤字になったからといって、廃業するでしょうか?

 あまりそういう風にも思えませんね。

 少しは減るかもしれませんが、かなりの農家はそのまま続けると予想します。

 残りの30%の販売農家が1ha以上で、さらに3%が5ha以上の大規模農家です。

 この3%の層で米作収入が500万円以上となり、主に米作を収入源として生活しています。

 ちなみに、この3%の層で日本のお米の3〜4割程度を生産しています。

 この層が、コメ自由化によってどうなるか、というと

1)収入減により撤退

2)撤退した農地を借り入れて規模を拡大

3)海外展開や生産、販売方式の見直しにより自由化に適応

 これらがどの程度の規模で起こり、結果として撤退する農家と収益を増やす農家のバランスがどうなるか、が議論の核心かと思います。

 いずれにしても、日本のコメが9割減というのはありそうにないように思えますね。

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