ここのところ、警世家づいています。
今回も、環境保全っぽい話で恐縮です。
今回は、農地の土壌の劣化に絞って述べていきたいと思います。
昔と比べ、現在では化学肥料や農薬の普及により、作物の収穫量は大幅に増加していますが、その一方で土壌は徐々に病んできています。
代表的な例が、連作障害です。
そもそも連作障害とは、同一の作物を同一場所で連作すると、作物の出来が悪くなることです。
前にも少し書きましたが、原因は色々と上げられています。
1) 植物の出す有害物質が、蓄積されてくること
2) 植物の利用する肥料成分と投入する肥料成分が、微妙に異なるため、成分バランスがくずれてくること
3) 有害生物が増えること
等です。
水田では、水を溜めることにより有害生物の繁殖が抑えられたり有害化学物質が洗い流されたりするので、連作障害は起きにくいのですが、畑作では大きな問題となります。
従って、昔はこのような連作障害が起こらないように、輪作して土壌の健康を保っていました。
ダイズや麦、雑穀等が、主要な輪作作物として、土の保全機能を担っていました。
しかし、これらは安価なため、次第に経済的に成り立ちにくくなり、代わりに野菜類の作付け比率が高まってきました。
一方、農薬を初めとする様々な連作障害の防止技術が発達してきて、連作が主流となりました。
ですが、こうした防除技術を行っているにもかかわらず、最近では連作障害が色々な産地で発生し、問題となっています。
この原因としては、上記にあげたうちの、特に有害生物の増大が全体の多くの割合を占めています。
さらには、最近では過度な連作をしないでも連作障害が表れてきています。
このような連作障害と間接的に結びついている可能性があるものとして、過度な耕耘や化学肥料、農薬の多投が挙げられます。
過度な耕耘により、土壌中の有機物の分解が早まったり、耕盤が出来たりして、かえって土が堅くなります。
その結果、植物が生長する際に根が張りにくくなります。
これにより、養分や水分が吸収しにくくなり、生育が不良となります。
また、これだけでなく、根のストレスにより植物が地上部の成長を抑制するようにシグナルも出すと言われています。
それで、結果として葉や茎が小さくなるそうで、これをBonsai(盆栽)効果というそうです。
化学肥料や農薬の多投も問題です。
肥料は水溶液の形で根に取り込まれますが、一部分が取り込まれず残留するものもあります。
代表例が硫安で、これは水に溶けるとアンモニウムイオンと硫酸イオンに別れます。
アンモニウムイオンは植物に取り込まれますが、硫酸イオンは土壌中に残留します。
(いずれは雨水とともに流されるか、土壌中の別のイオンと結びついて固定されます)
このような蓄積されたイオンが増えてくると、浸透圧の原理で植物が水分を取り込みにくくなったり、このようなイオンそのものが植物の毒となります。
これらの問題に対処するために、農薬使用量は年々増えてきていますが、それにもかかわらず、病害虫の発生頻度はじりじりと増えてきています。
以前のような健康な土壌に戻す必要は高いものの、即効的な方法はなく、その間の減収がまた問題となり、現在の農法を変えるのはなかなか難しいようです。
参考にした本
巽二郎 地球環境と作物 博友社
全国農業共同組合連合会、中央会編
これからの環境保全型農業 家の光協会
平成8年版なので、やや古い情報です。
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