2011年1月6日木曜日

日本の農業の現状と展望、その2

年末年始にふさわしい話題を、ということで年末から標記の話をしています。

前回は、日本農業の置かれた現状について概観してみました。

これを踏まえ、今回は今後の農業のあり方について、大胆にも述べたいと思います。

まず、この手の話の中で必ず出てくる話題としては、グローバル経済の中で農業はどのような経営形態をとるべきか、という点です。

よく見られる考えとしては、大規模化を押し進めて経営の効率化を図り、国際競争力をつけよう、という論があります。

しかしながら、私には大規模化したからといって、さほど国際競争力がつくようにも思えません。

他国と耕地面積や人口密度を比べたら、どんなに頑張ってもたかが知れていますし、労賃、原料費でも太刀打ちできません。

価格差が少し縮まるだけと思います。

そもそも私には、市場経済の原理自体、農業にはそぐわないように思われます。

というのは、食糧は他のものと異なり、需要を上回る供給が常に必要とされるからです。

自動車や家電製品であれば、少々品薄でもどうということもなく、消費者は手に入るまで待っていればよいです。

でも、食料の場合は手に入るまでずっと待っていると餓死してしまいます。

で、供給過剰となり、その結果市場経済の原理が働いて値崩れしてしまいます。

大規模化によるコスト削減をしても、外国で同じことを行えば、同じようにコスト削減して安くなります。

局地戦では、めずらしい野菜とか、安全安心な栽培方法で儲ける農家もいますが、業界全体で見れば果てしのない低価格競争に巻き込まれるという構図になってしまいます。

日本全体としては自由貿易を推進しないわけにも行かないので、戸別補償などで農家に直接支払いする方針自体は無理からぬところとは思います。
(具体案については色々な議論の余地があるとは思いますが)

従って、農業についてはそのような競争はあきらめ、それ以外の価値観で理想像を考えるべきではないでしょうか。

この価値観としては、昨今の環境破壊の事情に鑑みて、持続的農業、循環型農業の必然性が高いでしょう。

ちなみに、現在露地栽培では、1キロカロリーの野菜を作るために、その約4倍のエネルギーを肥料や耕耘等で投入し、ハウス加温栽培では20倍のエネルギーを投入しています。

これに対し、戦前の稲作では1キロカロリーの米を作るのに投入するエネルギーは1/20でした。

米と野菜でカロリー比較するのはフェアではありませんが、いずれにせよ投入エネルギーが急激に増加したことは間違いありません。

そして、このようにして投入したエネルギーや肥料は二酸化炭素として放出されたり地下水を汚染したりして、環境負荷要因となります。

大規模化すると、機械の大型化や薬剤への依存性が高まり、投入エネルギーはどうしても大きくなっていくのではないかと思います。

実際、グローバル農業の本家の米国でも、大規模化への反省がなされてきています。

LISA運動( Low Input Sustainable Agriculture 低投入持続型農業)が展開されてきており、不耕起栽培や農薬使用量を減らす取り組みがなされています。

日本では、耕作できる面積が狭い上に地方によって気候が大きく異なることから、もともと大規模化が難しい土地です。

従って、小規模経営に徹してきめ細かい管理を行う方が適していると思います。

そしてまた、それが本来の日本人の性質にもあっているし、それぞれの地域で作り易い農産物を作ることで環境負荷が軽減されます。

消費者からも受け入れられやすいのではないかと思います。

ただし、これでは経営面が成り立たないという問題は解消されません。

これには、補助金を投入して農家を支援する必要があります。

補助金には非農家、農家を問わず抵抗のある人も多いですが、これは、大義名分や交付額の妥当性がないというのが原因ではないでしょうか?

補助金の理由と金額、使い方を多くの人が納得できれば、大きな批判を受けることもありません。

ただ、大義名分として食料の安全保障というだけでは、お金に換算しにくく不十分に思えます。

これ以外には、農業の持つ様々な機能を定量的に評価されています。
→  日本学術会議の答申で示された農業の多面的機能

洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、河川流況安定機能などで、これらを全て合わせると、年間5兆円を超えるそうです。

これに対し、毎年の農業関連予算はその半分くらいです。

ということは、単純にいうと、洪水防止云々の国土保全の半分は農家がボランティアして成り立っていることになります。

国がなすべき対策を肩代わりして、貧窮状態にあるわけですから、現状に上増しする収入補填はあってもよいかと思います。

もちろん補助金は、各農家に対して上述の国土保全の寄与率に応じて支払わなければなりません。

そして、そのように補助金を沢山投入する分、農家もそれにふさわしいモラルとをもった行動が必要かと思います。

例えば、職業で言えば、消防士とか警察官は比較的国民(特に子供)に尊敬されています。

彼らの給料は国や地方から賄われますが、別段税金の無駄遣いとか言われる訳でもなく、大概の人は是認しています。

概ね勤勉、誠実に職務を果たして来たためでしょう。

農家の人達も、国土の保全を行っているという意識を国民に持ってもらい、そのくらいの敬意を払われる存在になればいいなと思います。

以上、だらだらと書いたわりには、ちょっと一面的に過ぎた議論となってしまい恐縮ですが、お許しください。

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