2013年10月1日火曜日

種子散布

 実りの秋です。

 もう、あちこちで稲刈りが始まっていますね。

 他にも、カキとかクリとか色んな実が熟してきています。



 このようなおいしい実がなるのはうれしいですが、あまりうれしくない実というか種も熟してきています。

 私にとって嫌なのは、例えばアメリカセンダングサ。

 茶色の、尖ったとげのような形をした細長い種です。

 あるいは、ヌスビトハギ。

 緑色で、泥棒の足跡のような小さな半円形の平べったい種です。

 河原とか、雑草がボウボウに生えたところを歩くと、これらの種が服に一杯くっついてしまいます。

 一粒づつチマチマと取っていくのが、うっとうしいです。



 雑草達にとっては、種を遠くまで運んでもらってうれしいのでしょうが・・・

 そんな訳で、今回は種子散布についてです。

 種子散布とは、植物の種が親株から離れて移動することです。

 植物は基本的には動けませんが、種は親株とはできるだけ離れたところに散布したい、というニーズがあります。

 自らのテリトリーを広げたいし、親株の近くでは忌地となり上手く育たない場合もあるためです。

 そこで、いろんな手段で遠くに移動しようとします。

 方法は、植物の種類により色々です。

 最初に述べた、動物の体にくっつくというのもそのうちの一つ。


 他に、自分で飛ばしてしまう立派な植物もいます。

 カラスノエンドウなどは種が成熟してサヤが乾燥すると、サヤがねじれて裂けます。

 そして、その衝撃で種が弾け飛びます。


 風で飛んで行く方法も、よくありますね。

 タンポポとかメヒシバとかです。

 タンポポ等は、わざわざ羽が付いていて、風に乗りやすくなっています。

 メヒシバの種とかは、一旦地面に落ちますが、風蝕といって風で土が飛ばされる時に一緒に飛んで散布範囲を広げます。



 こんなふうに風で飛ぶタネは、小さく軽い場合が多いです。

 その代わり、デメリットとしては、タネの中の栄養分が少ないので発芽力がやや劣る点が上げられます。



 逆に、重い種の場合は風による散布は期待できません。

 この場合は、鳥や動物に食べられて運んでもらうことが多いです。

 我々動物にとっても、どうせ移動を手助けするなら、体にくっつかれるより食べさせてもらう方がうれしいですね。

 WINーWINの関係が築けます。


 植物にとっては、実を食べてもらうために、よく目立つようにする必要があります。

 そのため、実の色は赤色や黄色っぽい色が多いです。

 赤色は、鳥にとって敏感な色と言われています。

 また、動物は何色が好きかはよく知りませんが、人間は黄色の食べ物を好むと言われています。

 このせいか、動物が食べるような大きめの実は黄色っぽい色が多く、鳥が食べるようなやや小さめの実は赤っぽい色が多いようです。

 もっとも、実が赤いから鳥が敏感になったのか、鳥が敏感な色だから植物の実がそうなったのかは不明ですが。

 いずれにせよ、実の色一つとっても合理的な理由があるのですね。



 ただし、動物や鳥に食べられて散布する方式は、なかなか大変です。

 実はやわらかくおいしくしておかなければなりませんが、種は噛み砕かれたり消化器官で消化されないように固くなっていなければなりません。

 それに、例え動物に噛み砕かれなかったとしても、体内を通り抜けることにより発芽能力が低下することが懸念されます。

 その代わり、糞と一緒に散布されるので、芽が出る頃には周囲の土壌の養分は豊富になります。



 また、生き物のなかでは、動物よりも鳥に食べられる方が有利なようです。

 というのは、鳥は空を飛ぶので散布される範囲が広がるためです。

 さらに、鳥は飛ぶために自分の体を軽くしておかなければならず、そのため不要物は早くに排泄しますので、その分発芽能力が失われにくいです。

 こうして食べられる方法を見ていくと、植物の種もご苦労なことだと同情してしまいますね。



 この他の種子散布の方法としては、水で運ばれる方法とか、単にそのままに落ちるだけ、とかいうのもあります。

 以上、子孫を残す戦術も、一つではなく多彩です。

 道端を歩いている時に、そんな目で雑草を見てみるのも面白いかもしれません。



参考にした本

小林正明 種子散布を科学する・・・花からたねへ  全国農村教育協会

鈴木善弘  種子生物学 東北大学出版会

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